香港のメディア王「自由のため1日1日を戦う」 「国家安全法」で逮捕されたジミー・ライ激白

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香港ドリームの体現者となったライに89年天安門事件が襲いかかる。民主化を求めた大陸の学生運動が無残にも鎮圧された天安門事件に共感したライは学生たちを支持するTシャツを大量に生産。

翌90年にはメディアグループ「壹伝媒」を立ち上げ、傘下の雑誌『壹週刊』の自らのコラムで保守派の首相で北京に戒厳令発令を宣言した李鵬を痛烈に批判した。これが原因となってジョルダーノチェーンの売却を余儀なくされた。その後は「壹伝媒」経営に集中。95年には『アップル・デイリー』を創刊した。

「今やかつての香港ではない」

「これまで通り『アップル・デイリー』の発行を続け、自由を求めていくことは香港国家安全維持法を作られてしまった今、危険であることは認めざるをえない。香港は今やかつての香港ではない。変わってしまおうとしている。香港で報道の自由を守ることは既に容易なことではなくなった。だからこそ、だからこそ、香港とこの社会のために貢献しなければならない。逮捕、保釈から10日が経とうとしている。終わったことは終わったこと。退屈している暇はない、やらなくてはいけないことばかりだ。いま私には米欧メディアのインタビュー申し込みが引きを切らない」

 しかし、ライが外国勢力との結託(共謀)容疑で逮捕されたのは、昨年の大規模反政府運動中に香港のアメリカ総領事館関係者と接触をしたこと、訪米してペンス副大統領、ペロシ下院議長らと面会したことによるものだとの見方が香港では強い。保釈されたとはいえ英BBC、米CNNなどこれまで以上に中国批判を強める西側メディアで自説を展開することは果たして安全といえるのだろうか?

「公判に有利か不利か、それはわからない。しかし、私を止めることは誰にもできない。長く続けていくために私たちは抗議行動においてさらに注意深く、創造的にならなくてはいけない。以前のように過激にはなれない。若者はとくにそうだ。過激になるほど、闘いが短いものになってしまう。頭を使い、耐えなくてはならない。長い闘いだからだ。いつまで闘わなくてはいけないのか、いつまで闘うことができるのか、それも誰にもわからない。私自身がいつ収監されるのか、いつまで香港にいられるのか、それもわからない。デイ・バイ・デイ――その日、その日を闘い抜いて、続けていくしかない。仮に香港にいられなくなる日が来たとしても、世界のどこかで香港の自由を守る闘いを続けるだけだ。止めることは決してできない」

香港ドリームを体現したライは、自由と民主を守る闘いのために、そのすべてを失うことも恐れない。「これまでの半生に悔いはない。そして、これからも後悔をしないために闘わなくてはいけない」

富永 久 ジャーナリスト

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とみなが ひさし / Hisashi Tominaga

1960年東京生まれ。新聞社、テレビ局勤務を経てフリー。中国大陸、香港、台湾を中心に国際情勢から柔らかネタまで何でもござれの雑食系。

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