韓国が日本よりGDPの落ち込みが小さかった訳 「戦後最大の経済縮小」はどこまで深刻なのか

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直近は感染拡大の懸念が報道されているが、ここまでのところ、韓国で経済縮小が緩やかに止まったのも、コロナ感染への対応を早期に厳格に行ったことが一因だった。台湾よりも感染被害は大きいが、10万人あたり感染者299人、死者数5.9人である。なお、日本のコロナウイルスの被害は、10万人あたりの感染者442人、死者8.7人で、いずれも韓国を上回っている。ただ、国際的に見れば、日本と韓国は、(1)被害者数の桁が異なる米欧や南米諸国、(2)圧倒的に成功した台湾、の中間として、香港やニュージーランドなどとともに位置づけられる。

コロナによる人的被害が相対的にほぼ同じである日本と韓国で、GDP縮小に差が生まれたのはなぜか。日本では緩やかな感染者拡大が続いた結果、4月に緊急事態宣言が発動され、おそらく社会的な同調圧力の強さもあって自発的な経済活動制限が実現した。

一方、韓国は感染者が当初大きく増えたが、4月以降は感染拡大ペースが緩やかになり、4~6月期の経済活動制限が緩やかにとどまったと見られる。さらに、新型コロナショックを契機とした世界的なテレワークの広がりで、パソコンなどの生産が増え半導体などのサプライヤーである韓国・台湾企業が、輸出・生産の早期回復の恩恵を受けた部分もあった。

日本の感染被害、経済活動縮小は相対的に抑制された

まとめると(1)新型コロナショックという危機に際して日本の感染被害、経済活動の縮小は、先進諸国の中では相対的に抑制された、(2)感染抑制に成功したアジア諸国の中でも、日本の経済縮小は大きいとは言えず感染抑制と経済活動制限のバランスをうまく取れた、(3) 感染をほぼ封じ込めた台湾、早期感染抑制に成功した韓国、と同様の対応ができていれば、日本経済の経済縮小はより抑制できただろう、ということだ。

以上を踏まえ、今後もコロナ感染抑制が必要な中で、経済ダメージ緩和と公衆衛生政策を徹底するために日本で必要な対応は何か。(1)感染抑制を後押しする所得補償継続、(2)医療・検査体制の拡充、に特化した財政政策拡大、そして強力な金融緩和の徹底、だと筆者は考えている。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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