経済回復が緩やかにとどまるため、8月に起きた長期金利上昇は続かず、一時的な動きにとどまるだろう。拡張的な財政政策が続く中で、金融緩和を徹底しているFRB(米連邦準備制度理事会)による国債購入が再度強化され、アメリカの長期金利は再び低下する可能性が高いと筆者は考えている。
一方、日本では8月17日に4~6月期の実質GDP成長率が発表された。メディアでは前期比年率で27.8%減少、戦後最大の経済の落ち込みになったと強調され、報じられた。
確かにこれは事実なのだが、世界の多くの国で4~6月期には活動制限を余儀なくされたため、戦後最大規模の経済縮小を経験したのは、何も日本だけではない。またすでに金融市場の注目は各国で始まっている経済復調がスムーズに進むかどうかであり、もともと発表時期が遅い日本のGDP統計が株式市場などに影響を及ぼすことは滅多にない。
「前年比」の方が経済縮小の影響をつかみやすい
そこで、各国の4~6月期GDPを比較することで、コロナショックに直面した日本が、他国対比でどう位置付けられるかを述べてみよう。まず日本での27.8%の大幅なマイナス成長は前期比年率換算ベースの数字である。こうした「前期比比較」は、瞬間風速としてどの程度経済が成長しているかを把握するために、GDP統計の精度が高いアメリカでは、通常は有用な定量指標になる。
ただ、今回のように各国で歴史的なショックで経済が大きく縮小した場面では、前期比年率ベースの成長率よりも、前年からの経済の減少率を示す「前年比」の方が、経済縮小の程度をつかみ易い。また、前期比ベースのGDP成長率を発表していない新興国も多いため、4~6月期GDPの前年比によって広範囲に他国と比較することができる。
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