2020年8月の猛暑が「例年以上にヤバい」理由 最高気温41.1度はいかにして発生したのか

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さらには内陸部も都市化している。埼玉県北部から群馬県南部にかけては、人口が200万人を超えている。熊谷や群馬県館林市が高温を記録するのも、こうした事情が原因と考えられる。

関東と同じ地形的条件がそろっているのが、濃尾平野だ。湾があって、平野があって、山がある。気温も同様の条件によって上昇していく。

大阪の場合は、もう少し環境が違うようだ。広い平野というより、京都の盆地という地形が大きく影響しているといえる。

あとは当日の気圧配置などの気象条件が左右する。

浜松が最高気温に並んだのは、本州に張り出した太平洋高気圧の影響で、北西からの風が吹いた。これがフェーン現象を起こした。

フェーン現象は、山を越えてきた風が100メートル吹き下ろすごとに1度上がるとされる。この風が名古屋の上空を通ったことでさらに気温が上昇して、浜松に流れ込んだ。浜松には海からも風が吹き込み、そこで熱風をブロックして暑くなったと考えられる。無論、浜松も新幹線が通る都市である。

さらに今年は、太平洋高気圧の上にチベット高気圧が張り出すという2重構造になったことで、雲ができにくく、全国で気温が上がった。

この猛烈な暑さで、東京都内では19日までに103人が熱中症で死亡している。新型コロナウイルスのペースを超えている。

熱中症だけではない猛暑の悪影響

熱中症ばかりでなく、脳梗塞が増えることも指摘されている。熱中症と同じように水分不足による脱水症状から、血液が「ドロドロ状態」となり、脳梗塞を引き起こす原因となる。また、夏かぜなど感染症を起こすと、血液がたまりやすくなり、やはり脳梗塞を起こしやすくなるという。同じ理由で、心筋梗塞にも気をつける必要がある。

さらに意外なところでは、気温の高い日というのは、低い日に比べて自殺死亡率も上昇する傾向にある。専門家によると、イギリス、韓国、それに日本の統計から裏づけられるという。

その理由は定かではないが、高温を招くフェーン現象は地表面のプラスイオンを発生させ、この影響で人間の精神に悪影響を及ぼす、というアメリカの研究報告もある。

それよりも身近なところでは、熱帯夜の影響が考えられる。快適な睡眠がとれないことは、精神状態によいものではない。睡眠不足は昼間の活動にも影響を及ぼす。

今年の猛暑には新型コロナウイルス対策も加わる。ストレス管理も重要な課題だろう。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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