2020年8月の猛暑が「例年以上にヤバい」理由 最高気温41.1度はいかにして発生したのか

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どうして日本の夏は、こんなに暑くなったのだろうか。東京でも猛暑日を数え、タイのバンコクやシンガポールよりも暑くなる。そう思って取材してみると、意外なことを知った。

そもそも日本の夏の暑さというのは、今に始まったことではない。例えば、東京はもともと明治時代から暑かった。

気象統計を調べてみると、1876〜1912(明治9〜45)年までの最高気温が30度を超える真夏日は平均で32.1日あり、このうち1894年には最多で65日間だった。現在では猛暑日と呼ばれる35度以上も3日ある。

最高気温の年平均も33.8度。最高は1886年に36.6度を記録している。総じて、東京はもともと暑い地域なのだ。

複数の要因が折り重なって上昇した気温

この暑さを底上げしているのが、地球温暖化と都市化だ。

昔ならば「夕涼み」という言葉があったように、夜になると東京でも気温は下がった。それが都市化によって夜、冷えなくなったところに大きな違いがある。いわゆる「ヒートアイランド現象」が、東京を暑くする。

もともとヒートアイランドとは、冬場の問題だった。それも産業革命によって著しく発展したロンドンのホームレスによって発見された。

夏場は少なかったはずのホームレスが、寒い冬になると、なぜかロンドンに増える。その事情を調べていくと、郊外よりも都市部の気温が高いことがわかった。これを人の集まる「Urban Heat Island」と呼んだことに由来する。当初は冬の気温が下がらないことが歓迎されていた。

それが日本では夏の高温を招いて人々を苦しめる。ヒートアイランドはさまざまな要因からできあがる複合現象となる。

まずは地表。例えば、成田国際空港の開業前の1974年の調査によると、滑走路など空港の敷地内は周辺よりも2度ほど高くなっていることがわかった。田畑に囲まれた平坦な場所に、コンクリートやアスファルトで固められた建造物ができるだけで、気温が上昇する。

ここに人々が集まり、活動することによってさまざまな熱を放出する。「人工排熱」と呼ばれるもので、冷暖房機の室外機から、交通機関によって排出される熱、あるいは工場や商業施設が機能することによっても、熱は放出される。

そこに建物や地表で相互に日射を反射する「多重反射」などが加わり、昼のヒートアイランド現状が起こる。これが夜間になると建物や地表に蓄積された熱が放出され、暑さによってフル活用されるエアコンの室外機からも排熱される。陽が沈んでもヒートアイランドは続き、気温は下がらず、熱帯夜となる。

ここに海風が加わる。もともと日射によって暖められた陸地に、日中は低温の海上から風が吹き込んでくる。とくに海に面した東京では、ヒートアイランドによって強烈な上昇気流をつくり、都会の熱を巻き込んで内陸部に向かって熱風が吹き込んでいく。「広域ヒートアイランド」と呼ばれるもので、これによって関東全域がより熱くなる。

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