成城石井の品ぞろえが他店と全く違うカラクリ 仕入れを他者に委ねない「バイヤー」の獅子奮迅

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ワインの品ぞろえも多彩かつ豊富だ(撮影:今井 康一、成城店で2019年3月撮影)

バイヤーの所属する商品本部には、精肉、鮮魚、青果、惣菜、菓子、グローサリー、乳日配、酒の8つの課があるが、だんだん部門の縦割りがなくなりつつあるという。例えば、オリーブオイルを買ってくれば、昔なら店頭に並べて売るだけだった。

今は、店舗でも売り、卸でも売り、ネットでも販売するだけでなく、惣菜を自社で製造しているセントラルキッチンの惣菜の調理にも使っていく。ワインバーのLe Bar a Vin 52でも使っていく。

オリーブオイルが1本ずつ瓶詰めされたものを買ってくるのではなく、原料としてドラム缶でどかんと購入してしまう。そうすることで、間に業者をはさまないことに加え、よりコストメリットが出せるようになっている。

最近では安心、安全、美容、健康など、バイイングには付加価値が求められるという。そうしなければ、最先端のニーズに応えられないからだ。

ほかにないものか自分たちで変えられるものを

ここで問われるのが、言うまでもなくバイヤーの力量だ。それこそ、スーパーにはメーカーや卸がたくさん売り込みに来る。それを判断する仕事を、成城石井では本来のバイイングの仕事とは考えていない。自身も元バイヤーである社長の原昭彦氏は筆者の取材でこう語っていた。

「もちろんナショナルブランドの商談もしていますし、それも必要なことです。しかし。私たちがどんなに努力しても、ナショナルブランドの味を変えることはできないでしょう。それ以上のプラスαを追求することも難しい。成城石井だけの限定もできない」

これでは、やはり大量に買う小売業者にスケールメリットが生まれざるをえない。原氏はこう続けた。

「そこで勝負するのではなく、品ぞろえで差をつけたいんです。ほかにないものを扱う。あるいは、自分たちで変えられる商品を買い付けして、すべて売り切る。そうすることによって、ほかとは違う差別化が生み出せると考えているんです」

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