成城石井の品ぞろえが他店と全く違うカラクリ 仕入れを他者に委ねない「バイヤー」の獅子奮迅

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ほかのスーパーではなかなか見かけない品が多い(撮影:今井 康一、成城店で2019年3月撮影)

成城石井のバイヤーは全員が、店舗経験者だ。まさに現場を知っている。そして担当カテゴリーに対する知識は専門メーカー・商社以上でないと、と伝えられている。そうしないと、買い付けをしても勝てないからだ。

だが、成城石井には卸にはない強みがある。店舗を持っているということだ。売り場に商品を投入したとき、どんな動きを見せるか、すぐにわかる。バイヤーは、販売実績を自分たちで分析できるノウハウも持っている。

実際、売れ行きがいいと1時間で追加注文をかける。逆に、厳しい状況だと見れば、価格戦略を含めて次の対策にすばやく出る。これはニーズが低い、と見れば引き際が早いのも成城石井の特徴だ。成城石井のバイヤーの世界は、甘くないのである。

そして売り場を持っているからこそ、売れるサイズ、売れる値段、売れる味覚、売れるパッケージなどを知っている。まだ都市部では知られていない地方の銘品を扱ったり、オリジナル商品の作り手としてコラボレーションしたりするとき、これが生きてくる。今や、オリジナル商品の開発も、バイヤーの重要な仕事になっている。

熟練バイヤーだからこその独特な目利き

バイヤーの仕事とは、どういうものなのか。実は、単に知識や技術ではないのではないか、という印象的なエピソードを社長の原氏に聞いた。

『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「海外の展示会に行けば、4000、5000もの出展社があります。おそらく、普通の人が行けば、ただのブースに並んでいるだけのように見えると思います。ところが、なぜか自分にはそこだけ輝いて見えるときがあるんですよ(笑)」

結果として、思わぬものをバイイングしてしまったりするのだ。その1つが、原氏がバイイングした成城石井のスター商品、イタリア・フェラリーニ社のチーズ「パルミジャーノ・レジャーノ」だったりする。

世界に出られない今、彼らの視線は国内に向いており、これから驚くような逸品が出てくるはずだ。バイヤーの神髄は、「本当にいいもの」を仕入れたいという強烈な思いだ。それが、驚くようなアンテナを立たせるのかもしれない。

上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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