あの無印良品が味わった「停滞」の意外な歴史 成功体験に縛られれば危機が訪れるという教訓

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「無印良品」を運営する良品計画には組織文化を一新して危機を突破した歴史があります(写真:西村尚己/アフロ)
今は一流企業でも、大きな危機に直面し、それを乗り越えてきた過去がある。日米20社の「危機の乗り越え方」事例を分析した新著『20社のV字回復でわかる「危機の乗り越え方」図鑑』を上梓した杉浦泰氏が全3回で3社のケースを読み解きます。
第1回は「良品計画」編。「無印良品」「MUJI」というブランドを展開する上場企業です。現在はその地位を確立している無印良品ですが、実は2000年頃には積み上がった在庫を焼却処分する必要に迫られ、経済メディアからは「良品計画『無印神話』に溺れ過剰出店、商品力低下」と厳しく指摘されていました。
なぜ良品計画は大きな危機に陥ったのか、そしてそのV字回復から学ぶべき教訓とは? 危機突破の本質を探ります。(本稿は杉浦泰著『20社のV字回復でわかる「危機の乗り越え方」図鑑』の一部を抜粋・再編集したものです、参考文献は本書に掲載)

大企業発ベンチャーの斬新すぎるコンセプト

無印良品の歴史は1980年に始まります。大手スーパーマーケット・チェーンの西友が、バブル経済へと向かっていく日本の消費社会に対するアンチテーゼとして「無印良品」というプライベートブランドを発売したことが発端でした。当時、無印良品が掲げたキャッチコピーは「わけあって、安い」。低価格ながら安さを感じさせない「ナチュラルテイスト」のパッケージングによって、「無印良品」の衣料品・加工食品・雑貨は、消費者の支持を獲得しました。

この結果、1980年代前半に「無印良品」は売り上げを大きく伸ばすことになります。西友の無印良品事業は、発売開始からわずか5年後の1985年には、年商約150億円を達成。1989年には西友は無印良品事業を「株式会社良品計画」として分離し、大企業発ベンチャーという形で「良品計画」の歴史が始まりました。

バブルの崩壊と、それにともなう消費者の「安くて品質のよいモノ」を求める機運によって、無印良品は順調に支持を集め、1995年に株式上場を果たします。

対照的に、親会社である西友、そして多くのスーパーマーケットはチェーンごとの差を打ち出しきれず、没落していくこととなりました。1996年2月期に最終赤字に転落し、その後も慢性的な赤字に悩むようになっていきました。

順調に業績を拡大する良品計画は、「無印神話」として賞賛されました。上場直前の1995年2月期時点で369億円だった良品計画の営業利益は、2000年2月期には1054億円に到達し、1000億円企業の仲間入りを果たします。

このように順風満帆に見える良品計画ですが、実は設立当初から、見えざる負債を背負っていました。見えざる負債の正体、それは、組織に根付いた「セゾンの社風」です。

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