ヤマ発が「赤字子会社」を完全に取り込んだ理由 ロボティクス事業で投資を加速する狙いとは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ヤマハ発動機が重点投資するもう1つの分野がある。それが協働ロボットだ。FA機器とは異なり、人と同じ場所で作業ができる産業機械である。

協働ロボットの実用化に向けては、人の認識のほか、人が近くにいる際に安全な速度で止まるなど力の制御が重要になる。認識分野はヤマハ発動機が得意とする技術だが、力制御は勝手が違う。「無理に開発するより得意なところとやるほうが得策と考えた」(加藤取締役)。そこで、2020年1月に早稲田大学発のベンチャー企業「東京ロボティクス」と技術提携し、出資することを発表した。

国内外で積極投資

ヤマハ発動機が最終的に目指すのはアウトドアのロボティクス。現在は工場のライン上、人が入らない限られたエリアでだけ使われている機械が使える場所を増やす、というものだ。ライン上の人がいる場所で使える協働ロボットはその第1歩になる。

その先も見据えヤマハ発動機はここでも攻勢をかけている。2020年3月には2016年にも出資していたアメリカのスタートアップ企業Abundant Roboticsに25万ドルの追加出資を発表した。

この企業はリンゴを農場で自動的に収穫する機械の開発を行っている。決まった場所で決まったモノを扱う従来の機械とは異なり、さまざまな地形に対応し、人にも危険が及ばないようにする必要がある。従来の産業機械が入り込めなかった分野に領域を広げて、さらなる成長を目指している。

静岡県浜松市にあるロボティクス事業部が入る建物(写真:ヤマハ発動機)

また、4月にはトヨタとの共同開発の実績もある自動運転開発ベンチャーのティアフォーと合弁会社のeve autonomyを設立した。この合弁では工場敷地内をはじめとしたモノの自動搬送ソリューション事業を行うという。ティアフォーの自動運転技術を生かし、工場内で決められた場所や動き以外にも対応し、モノが運べる形を目指す。

社名にもある「発動機」に変化の波が押し寄せる中、ロボティクス事業がヤマハ発動機の中で重要性が増す可能性は十分にある。足元では新型コロナウイルスの影響で、エンジニアが現地の工場で最終調整できない状況が続くなど、思うような回復はできていない。それだけに、来期(2021年12月期)のロボティクス事業の業績が今後を占う1つの試金石となりそうだ。

中野 大樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事