コロナ対策、「わかってきたこと」と今後の展望 公衆衛生の専門家が教える「この冬への備え」

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冬場になって、風邪の患者さんが増えて、感染対策の必要性などから医療が回らなくなったら、若い人や症状が軽い人は、数日は自宅で様子を見るようにという、再度の方針転換が起こる可能性もあると思います。普通の風邪でも、待合室で新型コロナの患者さんと接してそこで感染することが起こりうるからです。

新型コロナに対する対策をそろそろ緩めてはという意見もあります。指定感染症の措置を緩和する、または指定感染症から外すという意見です。しかし、この冬を一度は越えてからでないと、緩められない対策も多いのではないかと考えます。もちろん、保健所や医療機関への負担が増加しているので、その負荷は軽減しなければなりませんが。

ワクチンへの期待

世界中でワクチンの製造競争が進んでいます。日本政府もさまざまな製薬会社からワクチンを買い付けています。しかし、どのワクチンに確かな効果があり、安全性も確実であるかについては、いまだ十分な情報がありません。

また、感染リスクの高い高齢者を優先とするワクチン接種には、問題があると考えられます。例えば、接種した高齢者が2日後に亡くなったような場合、その原因は持病だったのか、ワクチンの副反応なのか、明確に判断することができません。そうしたことがまた報道を過熱させて、接種が進まないといったことが起きる可能性もあるのです。

このように、個人的には、ワクチンにはもちろん期待はするけれど、解決すべき問題が山積しており、そう簡単にはワクチンができたのでもう安心とはならないと考えています。

新型インフルエンザのワクチンの接種希望について、研究を行ったことがあります。その結果、持病があるなど接種を優先されるべきと考えられる人は、実は接種を積極的に希望していないという傾向が示されました。理由はさまざまだと思いますが、持病のある人は、まず健康な人がワクチンを接種して副反応がないことを確認してから自分も接種したいという希望があるのかなと解釈しました。今回の新型コロナワクチンの接種に際しても、同じような傾向が見られるかはわかりませんが。

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また、インフルエンザと同様の不活化ワクチンと言われるものには少し期待をしています。ただ、このワクチンは完成するとしたら2021年秋以降ではないかと言われています。

まずはこの一冬をなんとか乗り越えるべく、世界とも連帯しながら、日本は一体となって取り組み、そして良好事例を共有していかなければならないと思います。

最後に、ウイルスをしっかり除去する、衛生的手洗い手順を用意したので、ご活用ください。

コロナ対策の専門家が推奨する、ウイルスをしっかり除去する、衛生的手洗い手順。出版社サイトよりファイルをダウンロード可能です

なお、この原稿は2020年8月13日にまとめました。

和田 耕治 国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授・医学系大学院教授

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わだ こうじ / Koji Wada

北九州市八幡生まれ。
2000年、産業医科大学医学部卒業。臨床研修医、企業での専属産業医を経て、 マギル大学大学院産業保健学修士課程修了。ポストドクトラルフェローの後、北里大学大学院労働衛生学博士課程修了。
北里大学医学部衛生学公衆衛生学助教、准教授、WHOとILOのコンサルタント、厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議委員を経験。
国立国際医療研究センター国際医療協力局医師として活動の後、2018年から現職。
専門は公衆衛生、健康危機管理、感染症、国際保健。

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