テレワーク普及で「オフィス」は不要になるのか CBRE日本法人トップが語る今後の不動産市況

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――不振のホテルをあえて取得するオポチュニスティック(高リスク高リターン)な投資家もいるようです。

みんなそれをしたいはずだ。だが、ローンが付かないため出せる価格が非常に低く、その価格では物件オーナーが抱えるローンさえ返済できない。金融機関側には今のところ返済を迫る動きがないため、オーナーにとっては無理に売却するよりも金融機関と(条件変更などの)交渉をしたほうが得策だ。

――不動産の大部分を占めるオフィスビルの動向は?

オフィス移転の相談は今年7月に入ってから増えている。売り上げが激減しているため固定費を削減しないと存続が危うい、銀行に自助努力を見せないといけないというテナントが多い。ただ、実際に移転や退去を進めるというよりは、どんな選択肢があるかを机の上に並べている(検討している)状態だ。

さかぐち・えいじ/1989年三井不動産入社。2001年モルガン・スタンレー証券株式会社(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)入社、投資銀行本部マネージングディレクター兼不動産グループ統括責任者を経て、2016年より現職。世界最大手の事業用不動産サービス会社CBREグループの日本事業を統括(写真:シービーアールイー)

普通借家契約で入居しているなら退去に要する期間、原状回復費用、次のビルへの移転費用、移転先でフリーレントが付けられそうか。あるいは、(中途解約が原則不可能な)定期借家契約なら、居抜きや転貸での退去が可能か、ビルオーナーの承諾をどのように得るか、などのシミュレーションを行っている。

われわれはビルオーナーの特性を知っている。オーナーによってはビルに入居しているテナントと同じ業種を入居させることはダメ、エレベーターの混むコールセンターのような業態はダメ、といったルールもある。最近では、ビルオーナーに営業に行っても断られることが少なくなった。みな他社の動向を知りたいので、まずは話を聞いてみようというスタンスだ。

オフィスへの考え方は二極化する

――「オフィス不要論」が叫ばれています。

在宅勤務が機能していると胸を張っている経営者がいるが、それは裏を返せば自社のオフィスがこれまで何も生み出していなかったと認めているようなものだ。通勤に時間をかけて会社に来ても、「1+1=2」になっていなかった。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

オフィスは毎月賃料がかかる点で確かにコストだ。他方で、よい立地によい環境のオフィスを構えることが将来の成長につながる、などと投資として捉える企業もいる。在宅勤務ではこれまで築き上げてきた企業文化が維持できなくなってしまうし、社員教育も難しい。テナントからは、「海外でのオフィスのトレンドを教えてほしい」といった相談も来ている。

足元では企業業績に余裕がなく、また自社にとってどんなオフィスが必要かも手探り状態だが、もう少し時間が経てば企業の間でのオフィスに対する考え方は二極化(コストと考えるか、将来への成長投資と捉えるか)してくるだろう。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「渋谷や新宿など個別エリアの動向」「オフィスに求められる機能」などについても詳しく語っている。
一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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