フワちゃん、ヒットの背景にある「見事な戦略」 テレビ出演は上半期だけで早くも100本越え
「私は自分に自信があるのがデカイかも! 嫌いな人になんか言われてもヘラヘラしてられるけど、好きな人の言うことってすぐ聞いちゃうじゃん! そういうこと! 私が好きな人は私だから、自分の言うことしか聞かないの!」(『クイック・ジャパン』より)
かくして、フワちゃんの芸風や生き方は、「同調圧力からの解放」「押しつけられた価値観への抵抗」「自分で自分を好きになる」「自分に正直に生きる」といった文脈に回収され、令和の新しい感覚をアップデートしたポリティカルにコレクトなタレントという扱いを受けながら、EXITやぺこぱといったお笑い第七世代の芸人たちと並べてポジティブに言及されることが多くなった。
いつの間にか、時代のシンボルともいうべき立ち位置に、あれよあれよという間にのし上げられていったのである。
トリックスターになるか
だが、芸能界の“お約束”の支配力は根強い。彼女のようなエキセントリックな芸風は、「実は礼儀正しいイイ奴」といったキャラクターをすかさずあてがわれ、テレビ的にイジりやすい形で安易に消費されがちだ。
また、芸歴を重ねるにつれて自分の顔色を伺うイエスマンしか周囲にいなくなってしまった一部の大御所タレントにとって、フワちゃんのように損得勘定なくタメ口でフラットに接してくれるやんちゃな若者は、むしろウケがよくかわいがられる。既得権益を持つ大御所の“ファミリー”として、芸能界の保守的な論理に取り込まれていく危険性も、十分、孕(はら)んでいるのだ。
『徹子の部屋』(テレビ朝日系)にも出演し、地上波ゴールデン初MCが決まるなど、ますますテレビに重宝されるフワちゃん。果たして今後の芸能界に大きな風穴を開けて変革を起こす、“マジであたおかなトリックスター“になり得るのか。それとも、このまま既存のテレビに適応して丸くなり、消費され尽くしてしまうのか。いずれにしろ、これからの挙動に注目させてくれる存在であることは間違いない。
編集者&ライター。編集者として『週刊SPA!』、またライターとして田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)、プチ鹿島『芸人式新聞の読み方』(幻冬舎)、松尾スズキ『現代、野蛮人入門』(角川SSC新書)などの構成に参加。雑誌『GINZA』や『GetNavi』では連載コラムも。Twitterやnoteにて、恋愛・セックス・ジェンダー論の発信もしている。
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