フワちゃん、ヒットの背景にある「見事な戦略」 テレビ出演は上半期だけで早くも100本越え

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さらに、フワちゃんの巧みな戦略は「カラフルなスポブラ&ミニスカにお団子ヘア」という特異なファッションによって、自身の性格と芸風を世間に飲み込みやすくさせる“補助線”を引いたことだ。

ストレートの長髪で普通の若者っぽい格好をしていたころは、その態度のせいで養成所やオーディションでしょっちゅう説教され、ついには素行不良で事務所をクビになった彼女。そのまま“女性らしい”格好でテレビに出ていたら、きっと「生意気」「自分勝手」「勘違い女うざい」などと、心ない中傷で叩かれまくっていたことは想像に難くない。

だが、奇抜でポップなファッションを定着させた今はどうだろう。彼女は男でも女でもない、ある種“異形の道化”に扮することで世間の一方的なジェンダー・バイアスから逃れた。かわいくないとか調子こいてるとか、そういった“女であるだけで”勝手に容姿や態度をジャッジされるようなステージを、自分からとっとと降りてみせたのだ。

これについても、「あたしは普通の女芸人として真正面から戦ったら売れてなかったと思う」「『かわいい』『オシャレ』『先輩にタメ口』。女芸人にとって必要ないって思われてたその要素を逆にあたしの最強の武器にする」と発言しており、彼女が半ば自覚的に選び取った戦略だということが伺える。

忖度なしの“マジ令和”スタイル

しかし、何よりも彼女が時代の要請とWin-Winでマッチングできた最大の要因は、傍若無人ともいえる物怖じしない自由な言動と、感情をストレートに表現するその性格にある。

フワちゃんと仲のいい芸人のトンツカタン・森本は、楽しいときは楽しい、悲しいときは悲しいと感情をわかりやすく口に出す彼女の接しやすさについて、次のように語っている。

「人間って、プライドがあるものだから、そこまであからさまに気持ちって表現できないと思うんです。でも、フワちゃんは最初から気持ちをぶつけてきてくれるので、すごく仲良くなりやすいんですよね」(『フワちゃん完全攻略本』より)

街行く見知らぬ他人や、芸能界の大先輩にも鬼ガラミしていく彼女のスタイルは、普通の大人には無遠慮で失礼と受け取られかねない。だが、個性を押し殺しながら仲間内で空気を読み合うことに疲れ、権威に忖度して顔色を伺うことに息苦しさを感じていた若い世代にとって、打算や裏表なく、本音や本能ベースで自分らしく生きている(ように見える)彼女の姿は、ある種の“救い”や“解放”をもたらしてくれたのではないだろうか。

そして、フワちゃんのこうした言動のベースにあるのが、“自己肯定感の高さ”である点も、いかにも“マジ令和”という感じがする。

次ページEXITやぺこぱらと並んで…
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