「仕事は道場」であり、まず自分の家庭がある--『会社を踏み台にする生き方』を書いた吉越浩一郎氏(吉越事務所代表、元トリンプ社長)に聞く
60歳でビジネスの現場から退いて3年。ハッピーリタイアの典型に見える著者の著作活動に加速がつき、日本および日本人に対する「憂国論」は日増しに強まっている。
--フランスから帰られたばかりです。
社長を辞めてから、夏の2カ月半と年末年始1カ月の在仏を含め、1年のうち5カ月ぐらいは海外で過ごしている。
家内のふるさとは、フランスのコートダジュールにある香水で有名なグラース近郊。そこで多くの時間を過ごすが、その生活はとても豊かだ。どうも日本と厚みが違う。最近、日本の若い人は海外に行きたがらないようだが、不思議だ。生きている価値がないともいえる。楽しんだほうがいい。
--フランスは生活が豊か?
インターネットひとつまともに動かず、郵便局には行列ができる。電話してゴルフバッグを送ることもできない。が、どんな田舎に行っても、それなりの生活を優雅に過ごせる。たとえば冬場に行くとつくづく思うのが、日本流にいえば完全暖房。
どこの家も熱いお湯が循環できるようにつくられている。すぐに蛇口から熱湯が出るし、床暖房も万全。心から温まることができない日本の家とは大違いだ。南フランスといっても、東京よりはるかに寒いところだが、室内ではTシャツ一枚でいい。いつも室内はぽかぽかしているから、外に出て、そういえば寒い季節なんだと気づくほどだ。
--昨年は著書を6冊刊行、これからも目白押し。
誘われて、人がいいものだから、書くことになった。出版社がこういう主題でどうかと、いろいろ提案してくれる。平素思っていることを書いたので、自分の地が出る。
この本も、社長職にある友人の一人が新しい内容の形で面白いと言ってくれ、社員の主だった人に配ったという。もらった社員は、タイトルを見て考え込んでしまったかもしれない。何のためにと。読めば、自立できる人を求めているということはすぐわかるのだが。