公務員の評価が「A」「B」に偏る日本型人事の害悪 「窓際おじさん」はいかにして再生産されるのか

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メンバーシップ型雇用の下では、職務遂行能力に応じて処遇していこうという「職能資格制度」がフィットする。日本企業は「いったんメンバーとして迎え入れた社員の能力は経験により向上していく」という考え方を持っている。だから、年功を積み重ねることが重要であり、職務成果はあまり重要視されない。

そして、この制度に「学歴は職務遂行上のベースとなる知識レベルの差である」という考え方が結びつくと、勤続年数と学歴が昇進や昇格の基準となる。結果、昇進昇格の運用は極めて硬直的なものとなり、活力が失われていく。その究極の姿が、入省試験の成績が一生を左右するといわれる、国家公務員総合職の制度である。

こうした硬直的制度では、職務能力が高い“はず”の者が管理職になり、たとえ業務上成果が出せなくても、降格されることはない。「職務能力は高い“はず”だ」と考えるからである。そして、成果を出せない人はポストから外され、部付部長、部付課長などのスタッフとして処遇されることになる。

彼らは年を取れば「窓際族」となっていく。若手社員の間では「なぜ仕事のできない人が、自分たちより高い給与を取るのか」という不満が膨れ上がるが、実はその若い社員の多くが同じ運命をたどるのである。

こうした硬直的な職能資格制度を取りながら、付け焼き刃的に成果主義を導入しても、基本思想が相いれないのであるから、MBOの運用がうまくいかないのは当然であった。能力に基づく評価であるのに、なぜ業績評価の指標となる目標を設定しなければならないのか、という根本的な矛盾が存在したのである。

ウェルチ型人事評価を実行するには…

他方、最近しばしば話題に上がり始めたジョブ型雇用は「職務等級制度」と呼ばれる。職務の内容を職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)により明確化し、その成果に基づいて評価し、賃金や報酬を決定する仕組みである。

こうした仕組みであるから、年功や学歴は関係ない。職務成果のみが問題となるから、評価は透明である。できたら、できなければ×という単純なものだ。

職務等級制度では、期待される成果を大幅にアウトパフォームしたような場合には、多額のボーナスをもらい、昇格・昇進の対象ともなってくる。成果が目標に未達ということになれば、ボーナスも出ず、降格・降職の対象となる。

このジョブ型雇用が日本企業の間に定着すれば、目標も成果も明確になるので、上司は部下の評価を厳格に行えるようになる。そうなってくれば、社員の間に緊張感が生まれ、スキルの乏しい社員、成果の出せない社員は自己研鑽に励むようになる。これがうまく機能すれば、日本企業組織全体としてのパフォーマンス向上につながっていく。

こうした好循環をつくり、日本企業の競争力を取り戻すためには、早急な人事評価制度の運用改善が必要である。

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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