公務員の評価が「A」「B」に偏る日本型人事の害悪 「窓際おじさん」はいかにして再生産されるのか

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その結果、組織に貢献しない人が自分のスキルとパフォーマンスを改善する必要性を感じることもなく、ただ漫然と日本企業に残り続け、組織のパフォーマンスの足を引っ張るという問題を生んできた。

では、アメリカでも初期からMBOを導入したGEでは、どのように運用されていたのであろうか。

ウェルチが断行した人事評価のキモ

ハーバード大学に、伝説の経営者ジャック・ウェルチがどのようにGEの経営を導いたかを学ぶ「GEの過去20年の体質転換」というケース(ビジネススクールの授業用に開発・作成された教材)がある。その中に、ウェルチが人事評価制度の運用をどのように行ったかについて書かれている。

それによれば、GEではウェルチが着任した当初、トップ10%には「1」のレーティング、次のストロングは15%で「2」のレーティング、高い評価の50%には「3」のレーティング、境界線上の15%には「4」のレーティング、無能の10%には「5」のレーティングを行っていたという。

10人しかいないグループであっても、この分布に従ってランクづけしなければならないという強制分布のレーティング・システムであった。そして、「1」をつけてもらった人全員と「2」をつけてもらった人たちの大半がストックオプションを支給され、「5」をつけられた人はGEを辞めなければならないとされていた。

つまり、下位10%の人は自動的にGEを去っていき、10年経てば、会社のメンバーはすべて入れ替わるという仕組みであった(もちろん、例外的に常時いいパフォーマンスを出し、生き残る人はいたが……)。

この評価制度は、ウェルチの在任中に修正され、彼の統治下の後半では、トップ20%が「1」のレーティング、実績の高い70%が「2」のレーティング、ボトム10%が「3」のレーティングと、3段階に変更されたようである。

ただし、ボトムの10%に対し忠告して排除する慣行は「改善するか、異動するか」という哲学の下で続けられた。つまり、評価の強制分布の考え方と下位10%を排除するという考え方は変えられることがなかった。

このウェルチの評価制度の運用を見れば一目瞭然であるが、冒頭で触れた国家公務員の評価がAとBに偏るという問題、日本企業でも同様の評価が行われるという問題は、ボトムの人に退場を迫るのは日本企業では刺激が強すぎる懸念があるものの、究極的には単に強制分布を守らせれば解決する問題である。

日本企業でMBOの運用がうまくいかなかったことには理由がある。

MBOがもともと、明確に定義された“職”に対して必要なスキルを持った人間を雇用する「ジョブ型雇用」を前提としている。年功序列・終身雇用を前提とする「メンバーシップ型雇用」を採用する日本企業では、中途半端に成果主義が接ぎ木のように導入され、その評価ツールとしてMBOが利用されたのだ。

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