しかし、Web面接はそういうわけにはいかない。応募先企業に赴いて実際に面接官と対面で行う従来の面接と比べれば、受付や待合室、入室、退室などのすべての所作がチェックされることはないし、緊張感はそれほどではないかもしれない。ただし、Web面接には別の緊張感が存在する。その1つが、通信回線トラブルとPCなどの機器トラブルによって引き起こされる面接の中断に対する不安だ。
「人生がかかる就活面接で回線が止まってしまうと本当に焦ってシャツがびしょびしょになるくらい冷や汗が止まりませんでした」と作者。Web面接中に、実際に回線が止まったときの焦りがこちらにもしっかりと伝わってくる優れた作品だ。作者と同じ経験をし、共感する学生は少なくないだろう。「止まる」と「止まらぬ」の対比も素晴らしく、作者の焦りをよりリアルに生々しく表現できている。
続いて、優秀賞の2作品を紹介しよう。
Web面接の種類を大別すると、決められた時間に画面の向こうにいる人事担当者とリアルタイムに面接を行うタイプと、いつでも好きな時間に用意された質問に答える様子を録画して登録するタイプの2つがある。
さらに後者の中には、AIが学生の回答内容を基に、学生のタイプやその企業とのマッチ度を判定するタイプまである。AIの中には、判定に必要な情報が得られるまで、学生に追加の質問を繰り返すタイプのものもある。その結果、学生の回答内容によっては、15分で面接が終わることもあれば、60分を費やすこともある。
生身の人事担当者が相手の面接であれば、表情やジェスチャー、声のトーンなどの非言語情報もあるし、面接官が前のめりになって質問してくるのであれば、自分に興味を持ってくれているという手応えも感じられる。
だが、AIは違う。何度話しても無機質な声で繰り返される「もう少し詳しくお話しください」の質問にうんざりするとともに、「お前に何がわかるんだ」といら立ってしまう学生の気持ちを率直に表現したうまい作品だ。「AI」と「愛」をかけている点も見事である。
自宅ならではの家族の愛
優秀賞をもう1つ。
就活川柳でも、採用川柳でも自宅でのWeb面接を詠んだ句では、親(多くは母親)はどちらかというと「悪者」として登場するケースがほとんどだ。面接中に部屋へ入ってくる、横に同席して回答内容を指示する、面接中に大きな音で掃除機をかけ始めるなどなど。今回の選考では惜しくも入賞にはならなかったが、Web面接中の画面に風呂上がりの父親の姿が映りこんだという作品もあった。父親の登場はこの作品くらいだ。
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