そんな中、この作品に出てくる親はそれらの親とはまったく違う。「Web面接を受ける私に気を使い、『あまり聞かれたくないでしょ?』と、そっと散歩に行ってくれる母に感謝です」と作者。我が子の面接が何時から始まるのかをちゃんと把握し、そして面接が始まる前に席を外してくれる母親の背中に思わず感謝する息子の心情を見事に表現した作品だ。
今回の応募作品の中で、最もジーンときた作品である。本当にうらやましい親子関係だ。「オンライン」や「Web面接」ではなく、「自宅面接」の言葉の選択も秀逸だ。
ここからは、佳作に入選した作品をいくつか紹介していきたい。
自宅で受けるWeb面接の最中に、ペットの犬が飼い主の一大事であるにもかかわらず、ワンワンと元気にほえる様子と、ペットに罪は無いとわかりつつもいら立ちを覚える作者の思いがよく伝わってくる。
「ワンワン」「カンカン」とうまく韻を踏んでリズミカルな作品となっている。俳句と違って、「字余り」や音律をまたぐ「句またぎ」も許されるなど、自由度の高い川柳ならではの作品といえる。面接中の本人は焦るだろうが、ペットの犬は一生懸命に作者を応援していたのかもしれない。もしかしたら、回答を指示していた?
オンラインならではの「時間稼ぎ」
今年の就活生は、Web面接で面接選考を受ける機会が多く、回数を経るごとにオンライン面接のコツをつかんだ学生も多い。
慣れてくると、答えづらい難しい質問をされた際に、「画面が固まってしまったフリをして答えを考える時間を稼ぐ」というずる賢さと、就活生の必死さを感じられる何とも面白い作品だ。
本当にネット回線が固まって焦ったことがあるからこそ、その経験を上手く応用できるようになったということなのだろう。人事の皆さん、だまされないように注意が必要なようだ。
こちらもWeb面接ネタ。家族と一緒に住んでいる就活生で、自分だけの部屋がない場合、家中でWeb面接を受けられる空間を探し回ることになる。その結果、背景が白色で、家族の誰にも邪魔される心配のないトイレに行き着いたというユーモラスながら切実な思いが伝わってくる作品である。
1人用の個室だから、集中しやすいかもしれない。ただ、狭すぎて声が反響しないか、さらには、家族の誰かが用を足したくなったときにどうするのかが気がかりだ。個室ではあるものの、家族の共用スペースであることには変わりはない。
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