職場や学校「顔を出さなくてもOK」な時代の心得 コロナ機にコミュニケーションは根本から変化

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4~5月の緊急事態宣言下では、「休業要請対象の店が営業している」と警察などに「通報」したり、「安全のために(営業を)自粛してください」と店舗に紙を貼ったりする事例が全国で相次いだ。県外ナンバーの車への嫌がらせなどもあった。

そこに「コミュニケーション不全」はないのか。

「自粛警察と呼ばれる行為をやった人たちは、善意のつもりでやっていると思います。普通の社会感覚ならば、多くの人は自粛警察に対して、『なんてひどいことをやっているんだ』と思うでしょう。しかし、自粛警察のような行為は『この状況でも営業しているほうが間違っている。なんとか自分の行動で改めさせよう』という考えに基づいている。自分たちが正義の側、善の側にいると思っているので、『独善的だ』と批判されても、基本的に聞く耳を持っていません。『何言ってるんだ。向こうが先に悪いことをやっているんだろ』という立ち位置なわけです」

「自粛警察」が自分たちを省みることはなさそう

「感染が拡大しなかったら『われわれが活動した結果、未然に防げた』と思うだろうし、仮に感染が拡大したら『ほら見ろ、やっぱり自粛が必要だっただろう』と自己判断するでしょう。彼らが善の側にいると思っている限り、自分たちの行為を反省する根拠は見当たらないんです。今後、また表面化したとしても、自粛警察をやっている人たちに注意しても議論は平行線になるでしょう」

コロナショックを機に、私たちのコミュニケーションのあり方はどう変わるのだろうか。森教授は「コロナ後には希望がある」と語った。

「教育にしても仕事にしても今まで当たり前と思っていたことが、当たり前でもなんでもなかったということに私たちは気付きました。全員が登校を自粛しているときは、ある意味『全員不登校』なので、『登校と不登校』に区切ることに意味がなくなりました。『正規雇用と非正規雇用』『若者と高齢者』『健常者と障がい者』などもそうです。私たちはとかく、社会事象を二元論で切り分けて、社会を語りがちです」

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「コロナショックを機にこれまでやってきた二元論の切り分け方は、当たり前ではなくなるということに、みんなが少しでも気付けばいい。自分も他者もありのままに互いに認め合う社会になれば、今より楽に生きることができたり、『この社会にいてもいいんだ』と思える人が増えたりするでしょう。そうなれば、コミュニケーションの形も根本的に変わるでしょうし、そこに希望があると思います」

取材:当銘寿夫=フロントラインプレス(Frontline Press)

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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