若者に蔓延する「社会主義への憧れ」が危険な訳 「隷従への道」「アイデアのつくり方」を読み解く
今、社会主義にひかれているのは、世界のあり方に対して問題意識を持つ人たちだろう。そんな人たちにこそ、まずは本書を読んで、その理想と現実のギャップを知ってもらいたい。
「最悪の指導者」が生まれる理由
本書は示唆に富んでいる。例えば「最悪の人間が指導者になるのはなぜか」という章で、ハイエクはその理由を3つ挙げた。ここで語られる内容は現在にも通じる部分があるので、簡単に紹介しておこう。3つの理由とは、次のとおりだ。
(1)知的になるほど人の好みは多様化するので、単一の価値観を共有する可能性は低くなる。
(2)何度も繰り返し同じ主張を耳元でがなり立てるようなやり方によって、従順で自分の考えを持たない人を根こそぎ支持者にすることができる。
(3)敵への憎悪や地位の高い人への羨望のような非生産的なことで一致団結しやすい人間の性質を、熟練した扇動者は利用する。
これを踏まえて今の世界を見渡してみると、多くの気づきを得られるのではないだろうか。
もちろん、社会主義の理念自体を完全に否定するわけではないし、共感を抱く人の気持ちも理解できる。格差拡大による搾取や貧困の問題が、解決しなければならない大きな課題であるのは間違いない。ただ、価値観が変容し、金銭一辺倒の時代ではなくなった今だからこそ、格差の問題を克服しながらも、資本主義的な自由競争の生む“社会や経済のダイナミズム”を生かす方法を考えたい。
資本主義から一気に社会主義へ、という発想ではなく、資本主義を進化させ、いいとこ取りでよりよい社会を作っていくことを考えるべきだと僕は思う。
今後、コロナ後の世界でとくに重要なのは、人々のやりがいと安心感の両立だ。資本主義の自由なダイナミズムを生かし、進化させていくことで、僕たちはその実現に近づくことができるのではないか。資本主義への信頼が揺らぐ時代だからこそ、古典から最新理論まで幅広く学び、未来を構想する力を養ってほしい。
(構成:山本舞衣/週刊東洋経済編集部)
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