リモートで「給料が下がる人」「上がる人」の差 ほとんどの人は待遇が悪化するという事実
アップワークなどのクラウドソーシングサイトで高い時給を提示される高スキル人材にとっては、フリーランスとしての働きやすさは大きなメリットになる。
しかし、顧客サービスやデータ入力分野で働く低スキル人材は、契約ベースで働くと賃金が下がり、不安定な立場に置かれる傾向が強まる。企業は社内の給与規定があるため、スキルの低い人材であっても世間相場を超える賃金を支払っていることが多いが、請負業者やフリーランサーには通常、相場の報酬しか支払われない。
アップワークのオジメック氏は、仕事がアウトソースされるようになると低スキル人材の賃金が低下する可能性があることを認めた。ただ、同氏とカズリエル氏はアップワークのフリーランスはスキルの高い人が多く、報酬も概して高いと口をそろえる。
低下する団体交渉力
とはいえ、高スキル人材であっても、物理的なオフィスではなく、リモートで働くと待遇をめぐる交渉力が低下しかねない。グーグルにエンジニアとして長年勤務し、昨年秋に解雇されるまで労働組合を結成しようと活動していたローレンス・バーランド氏によれば、デジタルツールはすでに組織化された従業員の調整を容易にはしてくれるが、物理的に同じ空間にいないスタッフを新しく運動に巻き込むのには役立たないことが多い。
「会社のチャットで『ねえ、社外のデバイスでちょっと話せる?』とコメントしたりするのは危ないと考える人がいるかもしれない。そう考えるのは、たぶん正しい」(バーランド氏)
バーランド氏が言うには、同僚を運動に巻き込む典型的な手法の1つは、誰かが会社に不満を漏らしているのが聞こえてきたら、その人に話しかけることだという。リモートでは、まず起こりえないようなことだ。
クラウドファンディングサイト「Kickstarter(キックスターター)」の従業員のほか、大学・事務スタッフなどが参加する労働組合「事務専門職従業員国際労組(OPEIU)」の交渉ディレクター、サンディ・ポープ氏は、リモートワークは同一の仕事をする人々の間で格差を広げる可能性があると指摘する。オフィスの外でこっそりと情報交換するチャンスが減るからだ。
ポープ氏によれば、リモートワークは「透明性に欠ける。何が起こっているのか追いかけるのも難しい」。リモートワークはこのように透明性に欠けるので、企業は従業員の知らないところで業務をアウトソースしやすくなるのだという。
(執筆:Noam Scheiber記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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