リモートで「給料が下がる人」「上がる人」の差 ほとんどの人は待遇が悪化するという事実

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こうした事情は、とりわけ高給の仕事が少ない地方に住む高スキル人材にとって有利となる。ワードプレスのマーケティングマネージャー、ジェイソン・コールドウェル氏はモンタナ州ビリングスに暮らしながら、軽く6ケタ(日本円で1000万円超)を稼いでいる。家族が家を建てられるように、100エーカーを超える広大な土地を購入できないかと考えているそうだ。

一方、ベイエリアの高スキル人材にとっては賃金の伸びが鈍化する可能性がある。リモート化で企業が地域に縛られずに人材を探すことができるようになると、ベイエリア内での人材獲得競争が緩むからだ。

とはいえ、ベイエリアの高スキル人材が最終的に競争に勝ち残る可能性は残されている。また、ベイエリアで高所得人材の採用が減れば、不動産の買い手が減って住宅価格の高騰もやわらぐ、とクラウドソーシングサイト大手「Upwork(アップワーク)」のチーフエコノミスト、アダム・オジメック氏は話す。

リモートが迫る「働き方改革」

だが、もっと深い変化は組織のあり方に現れる。一般的な会社では、特定の業務に関わりのある情報は細切れになって組織内のあちこちに点在していることが多い。向かいのデスクの女性、3つ隣のキュービクルにいる男性、フロアの奥に構えている管理職……というように、日がな一日、対面でのやりとりを繰り返さないと仕事が進んでいかないのはこのためだ。だからこそ従業員は、都合が悪いときでも同僚と同じような時間に働かなければならなくなる。

これとは対照的に、ダックダックゴーやオートマティックのような分散型の企業は「情報の所有を個人から切り離し」、中央で管理する「ナレッジ(知識やノウハウ)の保管庫」を構築することを目指している、とスタンフォード大学の経営学者、ジェン・ライマー氏は書いている。これにより従業員は、勤務場所や時間にとらわれることなく、また同僚に頻繁に連絡する必要に迫られることなく、仕事を完了させることが可能となる。

何人かの専門家によると、変化はそこで終わらない。例えば、リモートワークが進んでいる会社では、従業員が単独で効率よく働ける仕組みが整っているため、従業員でない外部人材を活用しやすい立場にあるという。

「リモートでフルタイムの従業員を管理できるのなら、フリーランスをクラウドソーシングサイト経由で使うのはもっとたやすい」。こう話すのは、最近までアップワークの最高経営責任者を務めていたステファン・カズリエル氏だ。アップワークはオートマティックやウィキペディアを運営するウィキメディア財団など、高度に分散化した企業をクライアントに持つ。

カズリエル氏は、このような変化の多くはしっかりとした経営管理によって可能になった、と付け加える。物理的なオフィスを持つ会社は管理がいい加減でも仕事が回っていたため、変革を迫られずにきたのだという。

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