宅配便の「再配達無料」はどう考えてもおかしい そもそも送料無料という表現はどうなのか

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大島:宅配の関係では、通販の「送料無料」という表現もおかしいですよね。業として請け負う以上、お金をもらって仕事をしているのに、これを無料というのは違和感があります。

モノは運ばれて価値が出ます。そこを理解してもらうことが大事なこと、と語る大島氏(写真:輸送経済新聞社提供)

橋本:私が目指すゴールの1つが、送料無料をやめさせることです。以前、これをテーマに記事を書いたとき、ドライバーからの反応が大きかった。記事を読んだある出版社からは「送料無料はひどい言い方」と理解してもらい、「送料無料」という表現を「送料当社負担」に変更したというメールをもらいました。世の中の意識を少しずつ変えることで、自分たちの仕事が価値のないことと感じるドライバーは少なくなります。

大島:モノは運ばれて価値が出ます。そこを理解してもらうことが大事ですが、なかなか変わらない。おそらく、送料無料は文字的な訴求力があるのでしょう。でも「送料は当社負担」「送料込み」とするのが本来の正しい表記です。

橋本:長年、物流はコストとして考えられてきたことが残念です。表現1つで、ドライバーのモチベーションは変わります。送料無料という言葉の陰で、安全を守りながら確実に荷物を届けているということを理解してほしいです。

ドライバーの多くは「天職」と思っている

大島:10年ほど前、ドライバーになった理由を調査した際、車の運転が好きという回答が最多でした。ちなみに、2番目が賃金一時金への魅力、3番目が束縛されないという理由です。しかし、いまは車離れが進んでいます。賃金は全産業平均を下回り、ドライバーの行動も車両に搭載されたさまざまな機器で、細かく管理されるようになりつつあります。いずれも当てはまらない状況になっていますね。

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橋本:ドライバーの中には自身の仕事を底辺職だと言う人もいますが、多くは「天職」と思っているはずです。トラックが好きで、物流を支えているという静かな炎を燃やしています。スーパーなどで自ら運んだ商品を見かけた際、人々の生活を支えているという実感が湧くと話しています。

大島:やはり、ドライバーは「世の中のために」という認識が強いですよね。荷物を届けた際、「ありがとう」と言ってもらう瞬間も、そう感じるのではないですか。

橋本:そのときがうれしいとよく聞きますね。

大島:うれしいということを裏返せば、なかなか言われないということでもあります。どの仕事でも同じですが、世の中に仕事のやりがいを伝えていく取り組みがますます重要になりそうですね。

橋本:ドライバーの場合、やりがいと同時に、プライドを考えてあげることも大事です。私は現役時代、ほかにやりたかったことを捨て、やりたくない仕事をしてきた分、トラックドライバーをしていたことに、いまでもプライドがあります。

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