LINEとメルカリに共通する絶妙な稼ぎ方の本質 モバイルゲームやAKBも多段階価格設定が肝だ
代表的な事例が、スマートフォンなどでプレーするモバイルゲームだ。多くのモバイルゲームは「フリー」のビジネスモデルで提供されており、ユーザーは基本無料でプレーすることが可能である。
しかし、欲しいキャラクターや、ゲーム内の一部のアイテムを有料で購入するという、「デジタル財課金モデル」となっている。
このデジタル財課金モデルこそが究極の多段階価格差別である。ユーザーは毎月決まった金額を支払うのではなく、その時々のゲームへの熱中度に応じて支払い金額を大きく変化させる。1カ月に、まったくお金を支払わない人もいれば、10万円以上つぎ込む人もいる。
10万円払った人と無料で楽しんでいる人では、厳密には利用しているサービス内容は異なる。しかし、提供するサービスのコストは映画のときと同様に変わらない。そのため、提供側の視点からは、消費者の支払い意思額(その製品・サービスに払ってもいいと考える上限額。顧客評価額とも言う)に応じて、自由自在に価格を変えられる価格差別となっているのだ。
そして、「モバイルゲームは儲かる」というような話を、あなたも聞いたことがあるかもしれない。モバイルゲーム産業は、まさにこの戦略によって大きな収益と莫大な利益率を確保するに至ったのである。
実際に、あるモバイルゲームの収益を、販売データを利用して分析したことがある。その結果、多段階価格差別となっている実際の収益を100%としたとき、これを仮に一律で月額5000円としたときの収益、あるいは一律に月額500円としたときの収益を試算して比較すると、図1のようになった。
(外部配信先では図表やグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
図を見ると、多段階価格差別をしない場合には収益が著しく減少することがわかる。とりわけ一律500円の場合には、多段階価格差別の場合の13%しか収益がない。しかも、多段階価格差別のときと定額制のときで、コストはほとんど変わらないため、増えた収益はそのまま利益となる。
支払い意思額をすべて価格に変換する多段階価格差別戦略が、高収益化にいかに寄与するかわかる。これが「モバイルゲームは儲かる」といわれるからくりである。
1%から利益を生み出す多段階価格差別
このような多段階価格差別では、ごく少数のユーザー――全体の1%――からの収益が、サービス全体を支えていることも少なくない。なぜならば、各ユーザーの製品・サービスに対する支払い意思額の分布は、多くの場合「べき乗則」に従っているからだ。
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