LINEとメルカリに共通する絶妙な稼ぎ方の本質 モバイルゲームやAKBも多段階価格設定が肝だ

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まったく異なるビジネスモデルを採用しているように見えるが本質は同じだ(写真:東洋経済オンライン編集部撮影)

1つの価格で物を売る通常の戦略に比して、5~10倍もの収益を上げる価格戦略が存在する――。その名も「多段階価格差別」というものだ。

拙著『なぜ、それは儲かるのか』でも詳しく解説しているが、高度情報化で既存ビジネスが崩壊していくなか、覇権を握りつつある1つのビジネスモデルが存在する。そのビジネスモデルは、「フリー(Free)」「ソーシャル(Social)」「価格差別(Price discrimination)」「データ(Data)」という、たった4つのキーワードで構成される。これを私は「FSP-Dモデル」と呼んでいる。

前回の記事(「無料サービスをバカにする人が知らない稼ぎ方」2020年8月1日配信)では4つのキーワードのうち、ソーシャルの一側面である「ネットワーク効果」と、「フリー」「データ」は非常に相性がいいこと、複合的にそれらを活用している成長サービスが多いことを解説した。

しかし、ツイッターが10年間赤字だったことを紹介したように、実際のビジネスにおいては、これらを組み合わせただけで収益化が図れるわけではない。

ここで重要になってくるのが価格戦略である。サービスのどこに人々が価値を見いだしているか適切に分析し、価格づけを行う。最初は無料版しかなかったようなサービスでも、今ではユーチューブプレミアムやニコニコ動画有料会員、LINE有料スタンプのように、何らかの課金要素を用意していることが多い。

映画館の価格設定で考えてみよう 

そもそも「価格差別」とは、市場にいる複数タイプの消費者に対して、同じかあるいは類似した製品・サービスを2種類以上の価格で販売することと定義される。

価格差別の代表事例としては、映画館の価格設定が挙げられる。あなたが映画館で映画を見ようとすると、内容が同じものに対して複数の価格がつけられているのに気づくだろう。「学割」は、収入の低い学生には低い価格(1500円や1000円など)を提示し、そうでない一般消費者には高い価格(1900円など)を提示する戦略といえる。

価格差別が一物一価の価格設定よりも多くの収益を生むことは、直観的にもわかるだろう。より多く支払う意思がある人からは多くの支払いを受け、高い値付けなら買わない人からも少ないながら支払いを受けるからだ。実際、価格差別を行うと、一律1900円のような一物一価と比べ、数十パーセント増の収益が得られることがわかっている。

しかし、近年における価格差別は、このように何個かの価格を用意するというものにとどまらない。爆発的な高利益化を達成するような、価格の段階を無限にした「多段階価格差別」ともいえる戦略が増えてきているのだ。

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