LINEとメルカリに共通する絶妙な稼ぎ方の本質 モバイルゲームやAKBも多段階価格設定が肝だ
第三に、支払い価格に応じた明確な差別化ポイントをサービスの中に用意しておく。無料ユーザーが有料ユーザーに移行するには、無料と有料で明確な差別化がなければいけない。さらに、多段階価格差別であれば、低い金額を支払っている消費者と、高い金額を支払っている消費者の間でも、差別化されている必要がある。
どんなに裾野を広げても、全ユーザーが無料ユーザーのままであったら、高収益は達成できない。無料ユーザーに対してよいサービスを提供しつつ、上位1%が支払いを維持したくなるような差別化ポイントをつねに用意しておく必要がある。有料ユーザーのメリットが希薄でサービスを失敗した事例は多い。
「多段階価格差別」は特殊なビジネスモデルではない
このような多段階価格差別で成功している事例は、何もモバイルゲームだけでない。実はさまざまな製品・サービスですでに採用されているのだ。
例えば近年、握手券の付いたCDが多く売られるようになってきている。代表的なのがアイドルグループAKBのものであるが、あれらの売り上げが日本のCD市場規模を支えているといっても過言ではない。
この握手券付きCD、実は多段階価格差別で高収益を達成しているのだ。本来、CDというものは1枚あれば目当ての楽曲を聴けるので、2枚以上購入する必要はない。そのため、一般的な消費者は、CDを1枚のみ購入することとなる。
しかし、熱心な消費者にとっては、CDよりむしろ握手ができるという特典が消費行動に大きな影響を与えることになる。つまり、同じコンテンツに対して、100枚購入する人もいれば、1枚しか購入しない人もいるのだ。
ここで重要なのは、両者に対して同じコンテンツ(CD)を提供しているという点である。もちろん、CDを100枚買った人と、1枚しか買っていない人では、受けられるサービスは厳密には異なる。
しかし、楽曲CDのようなコンテンツでは、制作費用(初期費用)は高い一方で、それをコピーする費用(限界費用)はほとんどかからない。そのため、コンテンツ単位で見ると、ほとんど追加的費用なしに、熱心なファンには高い付加価値で高い価格設定を、普通のファンには普通の価値で普通の価格設定をしているといえる。
これを聞くと、モバイルゲームの構図に非常に似ていることに気づくだろう。そして、昨今の日本のCDランキングにおいては、AKBグループがかなりの頻度でランクインしているのをご存じの方も多いと思う。その売り上げの原動力になっているのが、実は多段階価格差別戦略だったのである。
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