台湾「デジタル大臣」が生んだ政治の新スタイル タン氏が提唱する「官民連携」の新たな姿とは

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では、社会にイノベーションが起きるとき、政府が果たすべき役割は何か。タン氏はイノベーションにおける政府の役割を政府が市民を全力で支持することだと考えている。

「過去によく聞かれた『シビック・エンゲージメント(市民の社会参画)』というものは、政府がテーマを設定して、市民に意見を求めるというものだった。しかし、ソーシャル・イノベーションは市民がテーマを決め、政府が協力して完成するもの。政府は決して主体ではなく、方向性をコントロールする存在でもない」

イノベーションのために新設された職務

タン氏がこれまで強く信じていたのは、「1つの意義のある任務を完成させるには、多くの人の知恵が必要だ」ということだ。タン氏は個人による試行錯誤よりも、大衆の知恵を出し合うことのほうがはるかに効率がよいと考えている。

また、どんな公共政策でも、その影響を受ける市民の数に対し、政策決定する政治家の数は極めて少ない。もし実際に影響を受ける市民らが政策のテーマを設定すれば、その討論の中には多くの意見が取り入れられる。つまり、市民の声を反映した政策は、一部の政府関係者が無理に推進した政策より優れたものになるはずだとタン氏は考えている。

イノベーションを実現させるために、台湾では「パブリック・デジタル・イノベーション・スペース」(PDIS)と「パーティシペーション・オフィサー」(PO / 開放政府連絡人)という2つの職務が創設された。

POに就くのは行政院所属の各機関と独立機関からの出向者で、その役割はメディアや政府のスポークスマンのようなものだ。また、POには自身の所属機関の業務を熟知し、かつ市民にわかる言葉で対外的な説明ができる能力を求められる。同時に市民の意見を内部に伝え、必要であれば会議を開く。PO間でも定例会議があり、各機関を横断する議題について話し合う。

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