NHK台湾新幹線ドラマを支えた「撮り鉄」の情熱

700Tを16年間撮り続けた男、ロケ地に精通

台湾の美しい田園と高速鉄道車両700T(写真:呉漾)

2020年5月16日から3週にわたりNHKで放送された日台共同制作ドラマ『路(ルウ)~台湾エクスプレス~』。同作は、吉田修一氏による小説『路』を原作とし、台湾新幹線プロジェクトを軸に日台3世代の心の絆を描いたドラマである。

ストーリーはもちろん劇中に登場した列車のシーンがとても美しく、台湾ファンのみならず鉄道ファンをもうならせた。一方で、それほどまでに心を打つ美しい撮影地が、どのように選ばれたかはあまり知られていない。

実は制作時、列車の走行シーンのロケ地選定が難航していた。そのとき1人の台湾人「撮り鉄」に白羽の矢が立った。彼の名は呉漾(ご・よう)。台湾の高速列車(台湾新幹線)を撮り続けて16年、これまでの撮影ぶりから感じられる、あり余るほどの情熱から「台湾の高速列車の撮影を最も熟知した男」と呼ばれている。

ドラマ・クランクイン直前に白羽の矢が

白地にオレンジ色のラインが映える台湾高速鉄道700T。その車両がトンネルから飛び出すと、遠くの山から「パシャパシャ!」とシャッターを切る音が響いてくる。痩せた身体に大きな撮影機材を背負い、黒縁めがねをかけた彼が「鉄道ファン」から「ドラマのアドバイザー」になった呉漾さん(53)だ。

ドラマ(台湾版)のスタッフ欄を見ると呉さんの名が「高鉄実景アドバイザー」として紹介されている。この「実景」という文字こそ、クランクイン直前まで残っていた問題だった。

2018年、NHKで『路』のドラマ化が決定し、2019年11月末のクランクインに向け約2年をかけてキャストの選定やロケハンなどが行われた。すべては順調に見えたが、たった1つ難しい問題が残っていた。それが「実景」である。

実景とは役者などが映りこんでいないあるがままの景色をさし、映像作品では景色のみを映すことで登場人物の心情を表現することも多い。だが、『路』では景色にプラスして最高時速300kmで走る列車を物語にリンクするイメージ通りに撮影する必要があった。制作チームは、その撮影ポイント探しに難航していたのである。

次ページ撮影場所の選定という難問をどう解決したか
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