台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」 キーマンが明かす「日欧混在システム」の限界

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日本の新幹線700系をベースに開発された、台湾高速鉄道の700T(記者撮影)
2007年に開業した台湾の高速鉄道が新幹線の海外展開事例であることはよく知られている。白地にオレンジの線がまばゆい車両「700T」は、東海道・山陽新幹線「700系」をベースに開発されたものだ。
しかし、完成に至るまでの道のりは平坦ではなかった。日本勢と独仏連合が入札で競合、1997年にいったんは独仏連合が受注を獲得したものの、その後1999年に日本が逆転受注を果たした。ただ、土木構造物などのインフラ部分はすでに欧州仕様で工事が発注されており、日本の受注は車両や電気、信号システムなどにとどまった。その意味において、完全な新幹線システムとは言いがたい側面もある。一方、台湾側は「世界の鉄道技術の良いところを集めた“ベストミックス”である」としている。
日本が独仏連合に敗れた後に、敗者復活戦に参戦したJR東海の田中宏昌氏(当時副社長、現在は顧問)は、日本が逆転受注を果たした立役者の1人である。一度は受注に成功した独仏連合をなぜ退けることができたのか、完全な新幹線システムでないことによりどのような問題が生じているのか。今後の新幹線の海外展開にどのような教訓を残したのか。すべてを知り尽くす田中氏に聞いた。

ドイツ高速鉄道の事故が転換点

――当初受注した独仏連合から新幹線の採用に至るまでのプロセスにおいて、最大の転換点は何ですか。

1998年にドイツで起きた高速鉄道の脱線事故だ。100人を超える死者が出た。この事故を契機に独仏の技術がミックスされた「ユーロトレイン」の安全性が疑問視され、技術の再評価が行われることになった。

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事故の原因は新しく開発した車輪が割損したことによるもの。この車輪は、本体の車輪を薄いゴムクッションで巻いて、さらにその外側に鋼製のタイヤをはめ込んだ多重構造になっていた。その鋼製タイヤが金属疲労を起こした。それを見逃した検査体制にも問題があった。

もし事故が起きていなかったら、新幹線の採用はありえず、当初の計画どおりユーロトレインが導入されていただろう。

新幹線の生みの親である島秀雄さんは、「新幹線は新しい技術を使うのではなく、今ある技術を最大限に生かして使うのだ」とおっしゃっていた。ドイツの事故の場合も、新しい技術を実用化するなら、その前に実験を十分に行う必要があったのだが、それを十分にしないまま実用化してしまったのだろう。

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