台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」 キーマンが明かす「日欧混在システム」の限界
ドイツ高速鉄道の事故が転換点
――当初受注した独仏連合から新幹線の採用に至るまでのプロセスにおいて、最大の転換点は何ですか。
1998年にドイツで起きた高速鉄道の脱線事故だ。100人を超える死者が出た。この事故を契機に独仏の技術がミックスされた「ユーロトレイン」の安全性が疑問視され、技術の再評価が行われることになった。
事故の原因は新しく開発した車輪が割損したことによるもの。この車輪は、本体の車輪を薄いゴムクッションで巻いて、さらにその外側に鋼製のタイヤをはめ込んだ多重構造になっていた。その鋼製タイヤが金属疲労を起こした。それを見逃した検査体制にも問題があった。
もし事故が起きていなかったら、新幹線の採用はありえず、当初の計画どおりユーロトレインが導入されていただろう。
新幹線の生みの親である島秀雄さんは、「新幹線は新しい技術を使うのではなく、今ある技術を最大限に生かして使うのだ」とおっしゃっていた。ドイツの事故の場合も、新しい技術を実用化するなら、その前に実験を十分に行う必要があったのだが、それを十分にしないまま実用化してしまったのだろう。
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