台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」

キーマンが明かす「日欧混在システム」の限界

――トルコでも昨年12月に高速鉄道の事故がありました。

トルコの場合は別の原因によるものだ。営業時間帯に保守作業が行われており、運行管理システムがきちんと機能していなかった。日本では、新幹線は営業時間帯と保守時間帯をきちんと分けており、コントロールセンターから指令が発せられることで営業時間帯と保守時間帯がきちんと切り替わる。したがって、営業時間帯に保守作業が行われることはない。

――台湾の高速鉄道は、車両は新幹線ですが、インフラは欧州のものが使われています。どう評価しますか。

システムを構築するためには、単独の部品が優秀というだけでは不十分。数多くの部品が組み合わされて1つのシステムになる。高速鉄道であれば、橋梁、バラスト、レールといった土木構造物から、電気を供給する変電設備や架線構造が一体となったシステムとして安全に機能しなくてはいけない。この点は台湾で何度も繰り返して説明したが、なかなか理解を得ることができなかった。

――日本のシステムを丸ごと採用するのではなく独自のシステムを作るという台湾の「ベストミックス」という考え方にも一理あるのでは?

彼らのシステムをまったく無視するつもりはない。だが、信頼性と安全性が担保できるまで十分に検証を行う必要がある。その時間がたっぷりあるならよいが、開業時期が決まっていて、そこに向けてスケジュールを組むとなると限界がある。

ドイツ製採用を強行した結果は…

――台湾が採用したドイツ製の分岐器はトラブルが頻発しているそうですね。

田中宏昌(たなか ひろまさ)/1939年生まれ。1963年東京大学工学部卒、国鉄入社。1984年国連ESCAP運輸通信観光部鉄道課長。1990年帰国後、JR東海入社。鉄道事業本部長、副社長等を歴任。2002年より同社顧問(撮影:梅谷秀司)

ドイツ製の分岐器は規模が大きく構造が複雑で、また、地域環境特性という面でもドイツと台湾は大きく違う。われわれはシンプルで小さな新幹線仕様の分岐器のほうが台湾に向いており、建設コストの削減にもつながると提案したのだが、台湾側は採用を強行した。もし十分な時間があるならドイツ製の分岐器を日本の分岐器と同じ条件で敷設して耐久性や信頼性をチェックしたうえで、改良することもできただろうが、そんなことをしていたらいつ開業できるかわからない。台湾側としては時間的な余裕がなかったのだろう。

結局、ドイツ製の分岐器は走行試験開始の時からたびたびトラブルを起こし、開業後も改善していない。この問題は立法院(国会)でも取り上げられ、集中審議が行われたが、すべての分岐器を取り替えるとなると1年程度運休しないといけない。だましだまし使っていくしかないという結論に落ち着いた。

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