台湾新幹線、的中した「開業前の不安要素」 キーマンが明かす「日欧混在システム」の限界
――客室内では窓のそばにハンマーが設置してあり、緊急時は乗客がガラスを割って脱出するという仕組みも日本と違います。
欧州の基準では列車が脱線転覆したときに窓ガラスを割って逃げるということになっている。車体がひっくり返っていないならドアを開けて脱出すればいい。また、車体が横になっていたら天井に窓があるので、ガラスを割ったら危ないし、そこからどうやって逃げるのか。「あまり意味がない」と申し上げたが「欧州から来ているコンサルタントの要望で」ということで採用された。この点でわれわれが強く主張したら、それが開業の遅れにつながるおそれもあり、OKした。
台湾の高速鉄道には、無駄なものや重複しているものが結構ある。システムとして考えずに、個別のものとして考えているからこういうことが起きる。
――日本側の努力が報われてよかったと感じたことは?
新幹線の教育を1年半かけてやってきて、それが随所に生かされていることは本当によかった。日本式の指差し喚呼も行われている。こうした教育の成果が見られると救われた気分になる。
新幹線とは「7割同じ」
――台湾の高速鉄道は、新幹線ファミリーの1つとして位置づけていいのでしょうか。
誤解を招くかもしれないが、わかりやすく言えば、新幹線との技術的な違いは3割くらい。逆に言えば7割は新幹線と同じで、ATC(自動列車制御装置)のような重要な部分は譲っていない。だから、新幹線とDNAは同じという言い方をすることもある。
今では1日当たりの平均乗客数も17万人まで増え、庶民の足として定着した。紆余曲折はあったが、トータルとして見れば、成功したといえるのではないか。
――アメリカ・テキサス州の高速鉄道計画では新幹線の導入が前提ですが、台湾を教訓にするとベストミックスでなく、完全な新幹線システムのほうがいいのでしょうか。
アメリカには連邦政府やテキサス州の法律がある。その技術基準と照らし合わせて改正できる可能性があるものについては努力していきたい。折衝しても、どうしてもダメだという事柄については、現地のルールに従わざるをえないと思う。
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