「米中対立の深刻化リスク」を軽視していいのか 再選に向けトランプ大統領は追い込まれた?
実際のところ、これまでは中国との関係悪化による経済への悪影響を恐れ、どちらかというと寛容な政策運用をしてきたという印象が強い。
なるほど、秋の大統領選のことを考え、保守派の支持をつなぎ留めておくためにも、強い口調で批判はしている。だが一方では株価を維持するために、実際にはそれほど政策を取ってはこなかった。
7月14日に「香港自治法」に署名、香港に対する貿易などの優遇措置を撤廃する大統領令を発動させた後にも、これ以上の関係悪化を避けるため、当面は追加の制裁を行わない意向を周辺に漏らしていたと報道されていたほどだ。それが一転、領事館の閉鎖を命令するという、国交断絶にもつながりかねない強硬な政策を打ち出す格好となったわけだ。
トランプ大統領の支持率低下で「対中強硬派」が台頭
こうした方針転換の背景に、トランプ政権内でマイク・ポンペオ国務長官やピーター・ナバロ通商政策担当大統領補佐官など、対中強硬派が勢力を強めてきたことがあるのは想像に難くない。
これまではこうした強硬派が政策を主張しても、トランプ大統領は最終的にはスティーブン・ムニューシン財務長官などの穏健派の意見を聞き入れ、市場に大きなダメージを与えるような過激な政策を思いとどまってきた。だが、今回は強硬派に押し切られるような形で総領事館の閉鎖を承認したのは、一体なぜなのか。
一番の大きな原因は、やはり新型コロナの感染再拡大や、対策に関する批判が高まる中での支持率の低下だろう。株価は3月に急落して以降V字回復、ナスダック総合指数などは史上最高値を再び更新するまでに至った。また経済指標も回復基調を強めている。
だが肝心の支持率は戻ってこないというのが現実だ。トランプ大統領の頭の中で、株価の回復はこれ以上支持率の上昇につながらないという見方が強まってきている可能性も、十分に考えられる。
実際、大統領は最近までウイルスの感染拡大を軽く見ていたフシがある。過度のロックダウン(都市封鎖)にも消極的だったし、つい最近までマスクの着用にも否定的だった。
それでも感染の拡大が抑えられていたうちは良かった。だが、ここへきて共和党の地盤で大統領の支持者が多い同国の南部を中心に、ウイルスの感染が再拡大。トランプ政権のウイルス対策の拙さが浮き彫りになったことの意味は大きい。
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