欧州で心配な「借入需要急増と銀行の貸し渋り」

ECBの「貸出態度調査」に現れた不穏な兆候

欧州では銀行の貸出態度に厳格化の動き(写真:REUTERS/Yves Herman)

異例の5日間にわたる協議を経て、EU(欧州首脳会議)首脳会議はついにコロナショックで疲弊する加盟国に支援を行うための復興基金設立で合意した。経験則にならえば、おそらく実際に運用する段階でまたひと悶着あるのではないかと筆者は踏んでいるが、とりあえずは「夏休み前に決着」と啖呵を切って、そのとおりにまとめた議長国のメルケル独首相はさすがといえる。とはいえ、復興基金は確かに重要な論点であるものの、欧州の経済・金融情勢が抱える問題は多数ある。

そもそも、今回のようにEUの政治が議論に時間を費やせるのはECB(欧州中央銀行)が必死の政策対応で現状を支えているからだ。拡大資産購入プログラム(APP)や緊急パンデミック購入プログラム(PEPP)の下、未曽有の国債購入によって利回りを押さえているからこそ、復興基金による財政措置がまとまらなくても大きな混乱が起きなかったのだ。

7月上旬、ラガルドECB総裁はフィナンシャル・タイムズのインタビューで復興基金を「本当のゲームチェンジャー(a real game-changer)」と形容したが、これは「これ以上、金融政策に依存しないでほしい」という本音の裏返しだと筆者は思う。「中央銀行」から「政府」へのバトンタッチは今のEUが抱える最大のテーマになっており、その代表格が復興基金の円滑な設立と稼動という位置づけかと思われる。

「貸出態度は厳格化、借入需要は急増」の怖さ

しかし、復興基金の稼働は2021年からであり(財源は2021年のEU予算)、目先の問題に対する処方箋にはなりえない。この点、別の問題として7月16日の政策理事会後の会見で複数回出てきた「政策効果失効に伴う崖効果(the fear of a cliff effect)」というフレーズにも目を向けたい。これは、今年7~9月期以降、主要国において政府の融資保証制度が失効するに伴って域内銀行の融資態度が厳格化することを懸念したフレーズだ。

復興基金はもちろん重要だが、各国政治が判断を誤ることで域内の与信環境が急激に悪化する展開のほうが、当面のユーロ圏にとっては現実的な脅威といえる。

筆者がそうした論点に注目するのは、7月14日、ECBが公表した「貸出態度調査(2020年7~9月期、Bank lending survey (BLS)」を見て危機感を感じたからだ。調査は6月5~23日、計144行を対象に実施されたものであり、コロナショック(とりわけ経済活動の自粛)を受けた金融システムの状況を把握するにあたっては適切な時期に実施されている。

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