欧州で心配な「借入需要急増と銀行の貸し渋り」 ECBの「貸出態度調査」に現れた不穏な兆候
調査で注目されるのは、企業向けの貸出基準に厳格化の兆候が出始めたことだ。今年6月までの欧州銀行の企業向け貸出態度は落ち着いているが、次の四半期(7~9月期)については急激に厳しくなるとの調査結果が示されている。しかも、リーマンショック直後とは異なる動きとして企業の借入需要も相当大きなものになっていることがわかる。
こうした動きに関してECBは調査報告書の中で「強い緊急流動性ニーズ(strong emergency liquidity needs)」や「ロックダウンに備えた予防的な流動性バッファー(precautionary build-up of liquidity buffers)」、そして「新しいコミットメントラインを引く動き」の結果だとしている。
もちろん、調査期間中にはターゲット型長期流動性供給(TLTRO3)が空前の規模(約1.3兆ユーロ)で供給されているため(筆者記事『ECBは政策金利のマイナス幅を実質的に拡大』参照)、調査結果が示すよりも企業金融まわりの切迫感は薄れているかもしれない。しかし、図のような「貸出態度の厳格化」と「借入需要の急増」が同時並行する状況は企業の連鎖破綻を予感させる非常に危うい構図である。
「守り」の資金需要には限界がある
容易に想像がつくように、「借入需要の急騰」は決して前向きな動きではない。企業買収や設備投資といった「攻め」の資金需要ではなく、運転資金という「守り」の資金需要であって、一言でいえば急場しのぎの資金が求められている。
企業が運転資金を理由に借入需要を強める動きはリーマンショック直後や欧州債務危機時にも見られたが、今回の動きは過去とは比較にならない大きな震度で起きている。経済活動が制限されれば、企業の売り上げは立たなくなるので資金の流出が続くことになる。
そのため、銀行からの迅速な借り入れが必要になるわけだが、経済活動の制限が続くかぎりは「穴の空いたバケツに水を入れる」のと同じである。ロックダウンとは企業(や家計)にそれほどまでに厳しい環境を強いる政策なのだということを明らかにしてくれる調査結果といえる。
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