欧州で心配な「借入需要急増と銀行の貸し渋り」 ECBの「貸出態度調査」に現れた不穏な兆候

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新型コロナウイルの感染拡大に関し、第2波、第3波が到来するのか、しないのか。筆者には知る由もないが、一部ではロックダウンはほとんど感染抑止に寄与しなかったという声もある。しかし、「寄与しなかった」では済まされない政策であることは知っておきたい。ここまで見てきたように、ロックダウンは企業からひたすらキャッシュを奪い、金融システムに相当の負荷をかける政策である。

現実的でバランスの取れた防疫政策を

第1波はかろうじてしのいだものの、はたして2度目、3度目のロックダウンに企業部門が耐えられるのかは、まったく確証がない。なお、今回は企業向けを中心とした与信環境を見たが、家計の住宅ローン向け貸出態度なども厳格化の方向にあることを忘れてはならない。

感染拡大防止策は人命に直結する施策であり、当然尊重されるべきものだ。しかし、大手金融機関の経営不安や破綻などのシステミックリスクが極大化した場合、それもまたリーマンショック時のように実体経済への大きなダメージとなって跳ね返ってくる。感染防止策で命を救えても、経済が死んでしまっては結局同じように悲惨な結末になる。

そうしたことを念頭に現実的でバランスの取れた防疫政策が取られることを切望する。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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