ECBは政策金利のマイナス幅を実質的に拡大 真のバズーカは銀行がお金をもらえるTLTRO3

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巨額の資産購入プログラムだけじゃないECB(写真:ロイター/Ralph Orlowski)

6月18日、ECB(欧州中央銀行)はターゲット型長期流動性供給第3弾(TLTRO3)の第4回入札の結果を発表した。TLTROは超低金利で銀行に最長4年の資金を貸し出すものだ。結果は1兆3084億ユーロとオペ1回の資金供給額としては史上最大を記録した。

なお、「欧州債務危機のゲームチェンジャー」とも言われ、就任直後のドラギ前ECB総裁の名声を一気に高めたことで知られる36カ月物長期流動性供給(LTRO)が、2011年12月22日(4892億ユーロ)と2012年3月1日(5295億ユーロ)の2回合計で1兆0187億ユーロだった。この就任間もない迅速な決定と前代未聞の規模を称賛する意味を込めて「ドラギバズーカ」というフレーズが市場を席巻したのである。

今回の供給額は入札1回で、36カ月物LTROの2回分を凌駕する規模になる。ちなみにTLTROは今回で第3弾だが、第1弾は入札8回で計4320億ユーロ、第2弾は入札4回で計7400億ユーロだったことを思えば、今回の規模がいかに規格外かが分かるだろう。

ドラギバズーカと称された36カ月LTROは約半分がリーマンショック直後に発行された期間を3年とする金融債の償還に充てられたとされており、この資金供給がなければ欧州の金融システムは大変な混乱に陥っていたとみられる。今回のTLTRO3も借り換え部分がおおむね半分を占めるが、市場からの調達資金の借り換えではなく「ECBから借りていた資金の借り換え」である。

銀行が必ずお金をもらえる仕組み

具体的に見ると、まずTLTRO2(第2~4回入札)の早期返済分で2140億ユーロ、満期を迎えるTLTRO2の第1回分で1604億ユーロが6月24日に返済される。TLTRO2の早期返済分が膨らんだのは「TLTRO3で借り換えたほうが得だから」だ。さらに、危機対応の一環として3月18日から6月10日まで毎週に打ち出されていたつなぎ融資13回分(満期はすべて6月24日)で3888億ユーロを返済する必要がある。しかし、これらを差し引いたネットベースでも5415億ユーロの資金供給が実施されることになる。

後述するように、この金額は3月以降、ECBが進めてきた資産購入の総額よりも大きい。バランスシート拡大への寄与だけを考慮するならば、「TLTRO3こそが真のバズーカだった」という考え方もありうる。

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