Webサイト刷新の75%が失敗に終わる残念な訳 経営者や責任者の気分はユーザーに無視される

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Webサイトリニューアル時には「全ページデザイン統一」という、ユーザー不在の無駄な作業が発生することがある。せっかくWebサイトのデザインを変えるからには、全ページ新しいトーンでそろえたいという、まさに「自己満足」以外の何物でもない作業だ。

Webサイトは運用の中で変化するものであり、デザインのバリエーションが時間の経過とともに多様化することは避けられない。全力で成果を出そうと新しい取り組みにチャレンジし続けるならば、ガイドラインを整備しようが、Webサイト管理システムを導入しようが、古くさいデザインルールなど守れるはずがない。

Webサイトリニューアルという機会に、全ページデザインを統一したところでどんな意味があるのだろうか。当然のことながら、大半の顧客はデザインの違いに気づかない。

古いページはそのまま放置すればよい。古いページは、できる限り削除しないほうがいい。なぜなら古いページでも、そのページに訪問するユーザーが少なからずいるためだ。

筆者はWebサイトのリニューアルによって、集客に貢献していた優良なページがバッサリ捨てられてしまい、訪問者数が激減してしまうという大惨事を何度も見てきた。長年積み重ねて作られてきたページは紛れもなく価値ある資産であり、自己満足のために失ってよいものでは決してない。どうしてもデザインが気になるなら、ヘッダー(ページの最上部)と、フッター(ページの最下部)だけ差し替えれば十分である。

「ゴール誘導強化」と「コンテンツ増強」が成功の鍵

大半のリニューアルは失敗に終わることを解説してきた。それではWebサイトはどうすれば改善できるのか? 成果の出るリニューアルとはどのようなものなのか?

先の調査結果より、「構造改革」のみを行ったリニューアルでは、サンプル数は少ないながら100%の企業が成果を出していた(3社中3社)。ここで言う構造改革には「ゴール誘導強化」と「コンテンツ増強」が含まれる。

『デジタルマーケティングの定石~なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(日本実業出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

Webサイト経由の反響を増やしたいのであれば、当然ながら購入や問い合わせなど「ゴールへの誘導強化」が不可欠だ。商品を簡単に選べる検索導線強化、問い合わせフォームへの最短動線強化などは成果の出やすい改善である。しかし「新しい感」を出そうとするあまり、多くのリニューアルは「ゴール」よりも「ポエム」を重視する。顧客の読まない、当たり障りのない「ポエム」は、ゴールへの導線を阻害し、Web経由の売り上げを損なう。

顧客の求めるテキストや画像を追加する「コンテンツ増強」も、Web経由の売り上げに貢献する。顧客にとって価値あるページが増えれば、そのページに直接訪問するユーザーが増える。言うまでもなく、価値あるページは閲覧した顧客がゴールに到達する確率も高い。

このようにWebサイトを含むデジタルマーケティングには、成果を出すための定石が存在する。大きな投資を意思決定する前には、必ずこうした定石を理解しておいたほうがいい。

垣内 勇威 WACUL代表取締役

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かきうち ゆうい / Yui Kakiuchi

東京大学経済学部卒業後、株式会社ビービット入社。大手クライアントのWeb改善コンサルティングに携わる。2013年、株式会社WACUL入社。
データ分析から改善提案や成果の測定といった「Webマーケティングの売上拡大のPDCA」をAIが支援するSaaSツール『AIアナリスト』を生み出す。現在は取締役CIO(Chief Incubation Officer)兼WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長として、さらなるノウハウの構築と新規プロダクトの創出を担当。3万サイト超の分析とユーザ行動観察から得たデジタルマーケティングの知見を、研究所レポートやTwitter、講演・セミナーなどで発信し、その痛快かつ明快な語り口で人気を博す。

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