超学歴社会の受験生を襲うコロナと災害の恐怖 中国では今年の大学入試が後ろ倒しになった

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中国で食品工場を操業する日本人経営者は、有能な社員を昇進させた際に、別の社員から「自分より学歴が下の彼が、先に昇進するのは納得ができない」と抗議されたという。

「学歴が高いほど稼ぎが増える」中国では、幼児教育や小学校も含めて、大学に至る前のすべての教育過程が大学入試のために存在していると言ってもいい。

校区内に家を所有していないと入学できない「名門」小中学校も多いため、保護者は子どものために住居を購入し引っ越すこともいとわない。教育に家庭のリソースを注ぎ込む中国人にとって、大学入試は天下分け目の決戦なのだ。

新学期に一斉にオンライン授業導入

中国で新型コロナウイルスの拡大が表面化したのは1月20日。大学入試の当初の予定日までは4カ月半を切っていた。当時は学校の冬休み期間だったが、1月23日の武漢封鎖と前後し、習い事や塾は閉鎖を命じられ、TOEFL、IELTSなど海外留学に必要な語学試験や就職・転職活動に有利な資格試験も次々に中止された。

「目の前に迫っている大学入試だけは、スムーズに実施したい」という社会の強い思いは、中国が短期間にオンライン教育を導入した主要な原動力になり、国民が厳しい外出制限を受け入れた理由の1つにもなった。

中国の学校は9月入学の2学期制で、後期は2月末に始まるが、当時は全国的に新型コロナとの戦いの真っ最中にあり、登校は禁止された。だが、日本の文科省に相当する教育部がアリババのテレワーク支援システム「DingTalk(釘釘)」をオンライン教育ツールとして推奨し、新学期が始まると、一斉にオンライン授業が導入された。パソコンやタブレットがない家庭も、親のスマホなどから授業に参加した。

休校が続くと思っていたら、オンラインで授業が始まったことに不満を爆発させた小学生が、アプリストアのDingTalkのレビューに「1」をつける行為が広がり、同アプリのレビューは短期間に急落したのも話題となった。

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