若者のSNS上で「言い訳写真」が大流行するワケ 実に日本人らしい理由がそこにはあった

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このように、自撮り写真をそのまま投稿することに抵抗感を感じる若者も多い中で、そのハードルを下げてくれるフィルターが根強い人気になっている。

今回紹介したような各種のフィルターは、ネタを提供するため、話題性を提供するためといった、自撮り写真を投稿する際の格好の“言い訳”になりうる。

自撮り写真を投稿すると周囲から「反感を買うかもしれない」「批判されるかもしれない」という不安があるなか、それでも「自撮り写真は投稿したい」という思いを実現してくれる便利なアイテムとして、支持されているのではないだろうか。

原田の総評:この傾向をサービスに生かせるか

現役学生の「自撮り」に関するレポートはいかがでしたでしょうか。冒頭で書きましたとおり、これまで日本の若者は1人での自撮りを載せるケースが他国に比べるとあまり多くはありませんでした。

これはおそらく他者の目を過剰に意識するという日本人特有の感覚が背景にあると思います。

自分の自撮りをSNSに載せると、自分で自分のことを可愛いと思っていると周りから思われてしまうのではないか、自意識過剰な人だと周りから見られはしないだろうか、そうした意識が日本の若者の自撮り、とくに1人での自撮りを抑制させてきたのだと思います。

海外では日本ほど周囲にどう思われるかを考えず、自分が好きなもの、自分が周りに見せたいものを載せる、という意識が強いと感じます。

しかし、若者とは国や時代を問わず自意識過剰な年代であって、日本の若者だって本音では自撮りをSNSに載せたい。よく撮れた写真を載せ、周りから可愛いとだって思われたい、という気持ちはあるのです。

この数年、こうした若者の未充足のニーズに応えるサービスやアプリが次々と出現しました。そして、日本の若者たちは、こうしたサービスやアプリを言わば”大義名分”にし、海外の若者たちのようにどんどん自撮りを載せるようになってきた、というのが今回のポイントであり、直近の若者のトレンドなのです。

若者にプロモーションをしたい企業は、こうした傾向を捉え、若者たちに免罪符を与え、彼らの自撮りとともに自社商品なども載せて貰う機会やサービスを創り出すキャンペーンやプロモーションを行うことが、若年層をつかむうえでのキーポイントになってくるでしょう。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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