八丈島の島民達が描く「離島の観光業」の未来 コロナ禍での住民たちの本音を聞く(後編)

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今回のコロナ禍で経営者は事業構想の練り直しを余儀なくされた。ホテル経営者の歌川さんもその1人だ。

歌川:これまでホテル事業の拡大と交通インフラの維持をリンクさせて活動してきて、いい感触をつかんでいた矢先のコロナでした。ここ数年の来島者は年間12万人で、それを15万人に拡大しようという事業構想を描いていましたが、減便や観光客の激減で見直さざるをえなくなりました。

これまで比重の大きかった団体シニアツアーは、高齢化の進行で2025年から2030年にかけてマーケットが縮小し、なくなっていくと言われてきましたが、コロナでその時期が前倒しになったのかもしれません。この団体シニアツアー客に代わる新たなマーケットを掘り起こしていかなくてはなりません。

早くても5年先と見ていた団体シニア層のマーケット縮小・消滅時期が目の前に迫ってきたのだ。いったい、どんな対応を取ろうとしているのか。

団体シニア層に変わるマーケットを模索

歌川:個人的には個人向け商品の拡充を図っていきたいと考えています。ホテルはもちろん飲食業も含めてですね。その1つがロングステイ、いわゆる長期滞在型のプランです。もう1つは移住促進ですね。私は今年2月に設立された町の移住定住促進協議会での活動に最近加わるようになったのですが、やはり移住・定住者を増やしていくことが重要になってきます。

仕事をしながら1週間程度滞在してもらえるような環境を整備していきたいと考えています。飲食店やランドリーサービスなどですね。団体シニア層に代わるマーケットを創り出すことが今後の課題です。

八丈町の人口は7月1日現在で7287人。1950年の1万2887人に比べ6割の水準に減ってしまった。しかも、老齢人口(65歳以上)が40.1%と、国のデータを上回り、高齢化の進行が際立っている。

さらに20代の人口は男女合わせて356人で全体の5%に満たない。子ども人口(0~14歳)は11.1%だ。島の活性化のためには人口増、移住者増は欠かせない。町としても喫緊のテーマといえる。とはいえ、人口増対策、移住者増対策は全国の自治体が抱えているテーマだが、具体策はあるのだろうか。

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