吉村洋文「勇気こそがリーダーに最も重要だ」 注目の大阪府知事がコロナ禍の対応を総括する

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(撮影:ヒラオカスタジオ)

専門家の皆さんが昼夜たがわずに奮闘されていることに、僕は敬意を表しています。でも、社会・経済を営む人の中には、誰も外に出なくなったら、明日の生活ができない人がたくさんいます。その人たちを守るのも政治の役割です。専門家は感染症対策の立場からやっているわけで、ある意味、そこに配慮しないわけです。ところが、専門家会議が感染症の場面だけで言っていることが国の方向性を決めている。いちばんの事例が緊急事態宣言の延長だったと思います。そこに危機感を覚えます。知識を提供する専門家会議と、判断する政府を分けたほうがいいと僕は思う。

社会を動かし、経済を回すのが第一

塩田:政府が打ち出したコロナ危機対策としての経済対策はいかがですか。

吉村:予算編成について、直接的な財政支出である「真水」の量とか、いろいろ議論はありますが、かなり大胆な予算作りをしていると思います。最も重要なのは経済活動を戻すことで、それが最大の経済対策です。外国依存が大きかったサプライチェーンの問題もありますが、内需が激減しています。

ただ、2008年のリーマンショックと違って、今回の経済の落ち込みは感染症が原因ですから、社会・経済活動を戻せば、不況から脱せるはずです。結局、経済を1回、全部止めると、家賃補助やいろいろな給付金など、お金を渡す仕組みだけでは限界がある。社会を動かし、経済を回すという方針を示すのが第一です。

塩田:吉村さんが今、首相だったら、何をやりますか。

吉村:ウイルスはゼロにはならないから、僕だったら、「ゼロリスクは目指さない」と明言したうえで、「社会・経済を元に戻していこう」と積極的に発信をしていきます。感染はここまでは許容しよう、それ以上は許容できないから、みんなに協力してもらうという「許容する感染」を定義づける。基準を明確にする。許容範囲では、みんなで感染対策をやりながら社会を動かそう、外で飲んで食べて消費して買いましょう、と積極的に打ち出していきますね。

とはいえ、因果関係がなくても、後で「あのとき、それをやったから、感染者が増えた」「おまえのせいで、第2波が来た」と言われる可能性があります。社会を動かせばリスクが生じます。感染症対策と社会・経済を動かすという相矛盾する要請を、政治家はリスクを背負ってやらなければいけません。

(後編に続く、7月23日公開予定)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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