吉村洋文「勇気こそがリーダーに最も重要だ」 注目の大阪府知事がコロナ禍の対応を総括する

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塩田:大阪府は「感染経路が不明の新規感染者が10人未満、検査を受けた人に占める陽性者の割合が7%未満、重症病床の使用率が60%未満」という独自基準を示しました。

吉村:大阪府には健康医療部があります。職員も優秀で、スタッフの医療の知識も高い。基準の中身は専門家に聞いて、いちばん大きなポイントの基準は健康医療部で作ってもらいましたが、僕が指示したのは、出口戦略を作るという方向性です。

国は作らないという話でした。感染者が減っているのに、いつになったら終わるのか、出口が見えないまま、国民は本当に不安の中にいる。どうやったら出口が見えるのか、出口戦略を作って「見える化」を推し進める。もう1つは、出口戦略の中身を示すときに、守らなければいけないものは何かという背骨の軸をはっきりさせる。

僕が指示した中身は、やはり医療崩壊の阻止です。崩壊にならない基準がこのモデルで、この数値を超えたら崩壊になる可能性があると府民に伝える。感染傾向が右下がりになって、医療崩壊防止が見込めるなら、休業要請も解除して社会を動かしていく。

塩田:大阪モデルの達成状況をライトで知らせるという手法を取りましたね。

吉村:大阪モデルを府民の皆さんと情報を共有するために考えたのが、通天閣や万博公園のライトアップの光の色を使い分けるやり方です。危ないときは赤、要注意は黄色、注意しながら社会・経済を動かすときは緑にする。府民の皆さんとのリスクコミュニケーションですよ。状況を隠さず、みんなに認識してもらわなければなりません。リスクはリスクとして知ってもらう。リスク時には大事で、それを光の色で伝えようとしたのです。

塩田:コロナ危機発生以降を振り返って、ここは反省点と思っている場面はありますか。

早くから入国制限を唱えるのも1つの方法だった

吉村:自分がやってきたことが本当に正しかったかどうかを判断するには、事後の検証が重要です。振り返ると、1点、躊躇したことがありました。1月末ごろ、中国からどんどん人が入ってきていた。そのとき、「入国制限なんかしたら、差別じゃないか」という声もありましたが、僕は入国制限すべきではないかと思っていました。

なのに、発信しなかった。出入国管理は国の仕事だから、というのが自分の言い訳でしたが、関西国際空港を持っている立場、現場の知事からすれば、今から考えると、権限はないにしても、あそこで「入国の制限を」と唱えるのも1つの方法だったのでは、と思います。

塩田:緊急事態や非常事態に直面した政治指導者に不可欠の資質とは何だと思いますか。

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