吉村洋文「勇気こそがリーダーに最も重要だ」 注目の大阪府知事がコロナ禍の対応を総括する

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塩田:府政のリーダーとして、「おびえず」とは、どんな決意と覚悟を持つことですか。

吉村:「おびえず」とは、政治家がリスクを負って前面に立ち、道を作っていくという姿勢です。正解はわからないから、自分がやっていることが、後で間違っていたとマイナス評価を受けることはありうる。それでも、リスクを受け入れて対策を取り、方向づけを行う。取り得る最善の策をつねにオープンにする。それが府民の皆さんの安心につながる。

塩田:1月から6月までの対応についてもお聞きしますが、その前に6月19日に自粛要請も含めたすべての制限を解除して人の移動を解禁した現状をどう見ていますか。

吉村:国民、府民のみなさんの協力と犠牲を得て、第1波は抑えられたと思っています。でも、危機感を持っています。第2波への危機感ではなく、第2波が来たときの対応をどうするのか。国家戦略として定めていないことに強い危機感を持っています。

塩田:ここまでの今年前半、府知事として最も緊張したのはどんな場面でしたか。

吉村:ずっと走り続けてきましたが、府民の命を守る立場として、何よりもニューヨークやヨーロッパみたいな状態にしてはいけないと毎日、その点を強く思って過ごしました。

大阪がニューヨークみたいにならない保証はなかった

ニューヨーク市の人口は約800万人で、880万人の大阪府とほぼ同じです。ニューヨークでは死体置き場が足りなくなり、道路に作るという状況になった。大阪で死体置き場が間に合わなくて、例えば大阪城公園に作るというような状況です。

ニューヨークは日本みたいな皆保険制度ではないけど、先進国の大都市で、医療体制は当然、整っているのにああいうことになった。同じ人口規模の大阪で、最大で1日に700人から800人の府民が亡くなるなんてことを絶対に起こしてはいけない。初期の段階はその頭で走り続けた。といっても、最初はニューヨークみたいにならないという見通しはなかったです。

塩田:大阪府知事としての決断で印象に残っているのは3月19日の兵庫県との往来自粛要請でした。兵庫県の井戸敏三知事との事前協議なしに、自分で決めて実行したのですか。

吉村:そうです。3月は20日の金曜日から3連休でした。連休前日の19日の朝、府庁の担当部から「厚生労働省から資料が来ました」と説明を聞きました。僕は資料を公開し、府県境をまたぐ往来はストップさせたほうがいいと思って担当部と話をしましたが、「国の非公開文書で、兵庫県にも届いているはずです。公開は難しいと思う」と報告を受けた。担当部はつねに厚労省とやり取りしていて、厚労省が「非公開」と言ったら、担当部としては当然、「非公開にすべき」と僕に進言する。それは当たり前です。

僕も頭ではわかっていたけど、中身を見ると、このままだと感染者数が1週間後に586人、2週間後には3374人と数字が書いてある。政府の専門家会議(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)の西浦博先生(北海道大学大学院教授)が示した「西浦モデル」ですね。僕は恐怖を覚えました。この西浦モデルに基づいて判断し、兵庫県と大阪府の往来はやめてくれ、といきなり打ち出したわけです。根回しする時間もなかった。

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