山本:世耕さんは加藤勝信・厚生労働大臣とともに、昨年11月に立ち上げた「明るい社会保障改革推進議員連盟」の顧問に就かれています。今年6月1日に公表された同議連の報告書には、予防・健康づくりに関する大規模実証事業の推進や保険者機能の発揮・強化、社会的処方の推進が挙げられました。同議連の枕詞に付いた「明るい」にはどんなメッセージが?
世耕:国民から見た社会保障の究極の目的は「健康でいられること」です。しかし、日本ではなぜか、健康管理についての議論は暗くなりがちです。節制したり、我慢を重ねて、健康になるしかない。医者に通って薬をもらって、それを飲み続けるしかない。まるで“修行”のようなイメージがあります。
そうではなく、明るく楽しい健康管理のあり方を提言したいのです。そのためには、極端に制度や財源に議論が集中しがちなこれまでの社会保障の議論を変えていく必要があると思いました。議員連盟(議連)とは、公式の組織ではありませんが、同じような目的意識を持った議員が集まり、政策の方向性を議論して、それを政権与党である自民党や政府に対して提言していきます。
この議連の目的は、病気の予防や健康づくりについて議論し、国民の健康増進、社会保障の担い手の増加、そして予防や健康づくりの分野における成長産業の育成を同時に達成することです。テクノロジーを使いこなすことによって、手軽に、気楽に健康を増進して、もっと前向きで明るい社会保障改革ができるんじゃないかという思いがあります。
山本:社会保障は国民の関心事でありながら、この分野に詳しい人とそうでない人のギャップが広すぎて、間を埋める中間層が全然いないように感じます。社会保障の専門家のほとんどが、行政や制度に精通しているというだけで、野心を持ってコンセプトを主張できない人が多い印象を持っています。
世耕:いわゆる「厚労族」といわれる政治家は、社会保障にかかわる「制度」に精通しています。例えば、何かのテーマで議論を吹っかけても、「じゃあそのことと昭和61年3月の制度改正との整合性はどう見るのか?」などと言われてしまいます。厚生労働部会は全然面白くないし、はっきりいってよくわからない。バサッと資料渡されても全然議論になりません。それをずっと不満に思っていましたので、今回自らと仲間の力で今までやってこなかった社会保障の議論をしたい。
山本:そうした思いがベースの議論だから、骨太な話ができるんですね。明るい社会保障改革が目指す理想的な社会や産業の姿とはどのようなものでしょうか?
テクノロジーによる健康増進は何を生むか
世耕:3つあります。
1つ目は、例えば衣服や腕、首などに装着可能なウェアラブル端末などさまざまなテクノロジーを使って人々の健康管理や健康増進をしていく産業が生まれ、高齢化の時代に新たな産業を興し、経済成長につながっていくということです。
それがうまくいくと、医療費の削減など国の社会保障負担が減り、財政健全化が進みます。これが2つ目です。
最後の3つ目がいちばん重要ですが、個々人が健康で幸せにいられるということです。
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