赤字転落のHIS、「GoToに期待」の厳しい台所事情 コロナ前の順風満帆が一変、膨らむ財務懸念

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では、HISに起死回生の挽回策はあるのか。

同社が掲げるのは、海外旅行よりも早期の回復が見込まれる国内旅行需要の取り込みだ。HISにおける国内旅行の売上高は現状、旅行事業全体の10%弱と小さい。ただ、大混乱しながらも7月22日から始まった国内旅行喚起策「Go To トラベル事業」による需要増に期待をかける。

旅行事業を担当するHISの中森達也専務執行役員は「(HISが得意とする)海外旅行事業に投入していた(人材などの)リソースを、国内旅行事業に再配置していく。ハウステンボス、グループホテルと連携して販促し、シナジーを出していきたい」と力を込める。

「何でも屋」的な経営に

ポートフォリオの分散にも本腰を入れる。2020年10月期上期決算では、先行して展開してきた電力小売り業の拡大により、エネルギー事業は営業利益が前期比157%増の9億円となった。

澤田秀雄会長兼社長の陣頭指揮でエイチ・アイ・エスは成長を加速させてきたが…。(撮影:今井康一)

澤田会長は中・長期的な成長方針として、オフィスビルの取得・運用による不動産事業や食材の国際流通などの商社事業といった、イベントリスクが比較的少ない非レジャー事業に注力する姿勢を示している。

とはいえ、畑の異なる各事業を並行して軌道に乗せるのは容易ではない。これまでも祖業の旅行からテーマパーク、ホテルへ、事業範囲を「何でも屋」的に拡大してきたが、澤田会長の陣頭指揮により、経営破綻したハウステンボスを再建させる間、柱の旅行事業が伸び悩む時期があった。澤田会長が再び旅行事業に本腰を入れると、今度はハウステンボスが集客に苦戦し始めた。

また、業績回復のカギとなるのは、主力である海外旅行事業の復活だ。海外各国における出入国規制の緩和や感染状況を見極めつつ、経営資源を機動的に海外旅行へ再配置できるかが勝負となる。

新型コロナの感染拡大への警戒感が再び強まり、Go To事業も「東京除外」で混迷する中、多角化経営を軌道に乗せられるか。HISの道筋は現時点では不透明だ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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