1日20万件のPCR検査能力が日本に必要な理由 政府コロナ分科会の小林慶一郎教授の提言

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PCR検査能力の拡大には、人材育成や検査精度管理の維持など課題もある。ただ新技術活用や、より簡易な抗原検査の併用をテコに現在、政府も検査能力拡大に躍起だ(写真:ロイター)
7月上旬、従来の新型コロナウイルス対策の専門家会議から発展的に移行した新型コロナウイルス感染症対策分科会。感染症学や経済学など幅広い分野の専門家で構成され、感染拡大防止と社会経済活動の両立などを助言する。その構成員で積極的な政策提言を続ける東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹に、今後のコロナ対策と金融財政政策のポイントを聞いた。


――世界の経済学者が、新型コロナウイルス対策でさまざまな提案を行っています。

主な対策の選択肢を挙げると、自粛や休業などの行動制限、積極的な検査・隔離療養、重症化リスクの高い高齢者層の選択的行動制限、行動制限の周期的なオン・オフなどがある。

ドイツ・ハレ経済研究所のオリバー・ホルテミュラー教授は、行動制限と検査・隔離療養について、どのような期間の長さや度合いの組み合わせが最適解なのかを調べた。最適解というのは、死者数を一定以下に下げながらGDP(国内総生産)を最大化するという意味だ。

行動制限と積極的な検査の組み合わせが最適解

――自身でも新著(『コロナ危機の経済学 提言と分析』<日本経済新聞出版社>、7月21日発売予定)で分析を行ったそうですね。

ホルテミュラー教授の知見を基に、私と奴田原(ぬたはら)健悟・専修大学教授が分析した。行動制限では8割接触削減でなく5割接触削減を3カ月間行い、それと積極的な検査・隔離療養を長期的に行うことを組み合わせるのが最適解だとの結果が出た。

――6月に公表された政策提言は、基本的に現在の政府の取り組みと同じ方向性ですが、PCR検査能力について具体的な数値目標を掲げた点が特徴的です。

提言は、政府が行おうとしていることを徹底的にやろうというもので、経済学界だけでなく、医学界、県知事、経営者など幅広い賛同を得られた。政府の反応も悪くないが、ただPCR検査能力の数値目標だけは嫌がられているようだ。

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