発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない

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また、ADHDとASDの区別も、非常に曖昧で難しい面があります。ADHDなら多動・衝動性と不注意、ASDなら対人関係のトラブルとこだわりの症状など、それぞれ典型的な特性があるのは確かですが、臨床の場面では、両方を同時に示すようなケースにも頻繁に出合います。

例えば「話し出したら止まらない」のは、ADHDにもASDにも見られる症状です。ADHDの場合は「思いついたことを言わずにいられない」衝動性が原因であるのに対して、ASDの場合は「他人に対する無関心、配慮のなさ」が原因ですが、見かけの症状は同じなのです。

さらに付け加えるなら、子どもの場合は両親からの虐待が引き金になり、「愛着障害」といって、ADHDやASDによく似た症状が表れるケースも見られます。

医師の側の問題もあります。もともと発達障害の専門医の多くは、自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門としていました。そのため、診断もASD寄りになる傾向があるのですが、実際にはASDよりもADHDのほうが何倍も症例が多いのです。

しかし、これはある程度やむをえない面があるのかもしれません。というのは、これまでの児童精神科において治療の対象としていた発達障害は、ASDの中でも最も重症の自閉症であり、さらにその多くが知的障害を伴うケースだったからです。

これに対して現在、成人の女性の発達障害においては、主な疾患はADHDであることに加えて、知的レベルは正常かそれ以上の例が大部分です。つまり、対象としている患者層が、以前とはまったく異なっているのです。

「グレーゾーン」の患者も多くいる

さらに厄介なことに、「発達障害か、そうでないか」についても、線引きが曖昧です。そもそも精神科の診断には、白黒はっきりつけがたい「グレーゾーン」が多く含まれています。

発達障害も、発達障害という確定的な診断はつかないにしても、発達障害的な特性によって、日常生活に問題を抱えているケースがよくあります。つまり、ASDもADHDも、「スペクトラム」なのです。

例えば、ADHDと断定はできないけれども落ち着きがなくて忘れ物が多い人、ASDと診断するほどではなくても空気が読めずに人の輪に入れない人などは、たくさんいます。

発達障害とそうでない人の間には明確な区別が存在しているわけではなく、さまざまなグラデーションが存在しています。そのため、「この一線を超えたら発達障害」という線引きは、医師ごと、病院ごとに委ねられています。

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