他人の子育てに「愛情不足」と口を挟む人の害悪 あまりにも主観的で根拠のない「決めつけ」だ

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「愛情不足」という言葉は、母親を追い詰めるだけ(写真:shu/PIXTA)
子どもが病気になったり、ケガをすると「愛情不足じゃない?」と言ってくる人がいます。でも、「愛情不足」という言葉は子育てに励むお母さんを傷つけるだけ。無責任に「愛情不足」と言ってはいけない理由を、小児科医の森戸やすみさんが解説。朝日新聞「アピタル」の連載をもとにした書籍『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』から一部抜粋・再構成してお届けします。

子どもに何か困ったことがあると、「愛情不足じゃない?」と言ってくる人たちがいます。

祖父母や周囲の親、近所の人などといった身近にいる人だけでなく、まったく見知らぬ人から言われることもあります。子どもが生まれる前には想像もしなかったことかもしれませんが、生まれてから「こういうことだったか……」と理解する人も多いのではないでしょうか。

私も、娘が小さかった頃に経験があります。電車でぐずる娘を見た高齢女性がニコニコしながら近づいてきて、「お母さん、もっと抱きしめてあげて」と私をさとすように言いました。娘が泣いていたのはテーマパークでめいっぱい遊んで疲れていたからで、私が抱きしめて愛情を示さなかったからではないのに。とっさに言葉が出ず、それでも何か言おうとした私に彼女は「いいのよ、わかっているから」という顔でうなずき、去っていきました。

ほかにも子どもが小さいときなら夜早くに寝ない、おしゃぶりが取れない、しょっちゅう風邪をひく、原因不明の病気になる、もっと大きくなってからは非行に走る、発達障害があるとわかる……、ことあるごとに親の愛情不足だといわれます。そういう言葉をまっすぐ受けとめてしまって悩み、お子さんの診察のときに相談される保護者もいます。

子どもの病気と「愛情不足」は無関係

ところが、小児科医をはじめ子どもに関わる専門家の中にも愛情の多寡の話をする人がいるのですから残念なことです。そんな経験を打ち明けてくれる保護者もいて、「もうあの医療機関には二度と行きません」などと憤慨されています。無理もないと思います。

子どもが病気やケガをしたときに「愛情不足」だなんて言われると、保護者としてはとてもこたえますよね。あまりに主観的で根拠がなく間違っているうえに、声かけとして不適切で、ご家族との信頼関係を壊す原因になってもおかしくない発言だと思います。

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