これら給付金を除けば、国の補正予算で目玉となるものは残り少なくなった。感染症対策の財源は国が負担するが、地方自治体に渡して執行するものも多い。それだと多くの国民は国が実施したというより、都道府県が実施したものと認識する。
新型コロナに対応する地方創生臨時交付金も1次補正と2次補正合計で3兆円計上しているが、それを受け取って現場で支出するのは地方自治体だ。
補正予算の中で国が直接支出できるものはないか。その1つがGoToキャンペーンである。GoToトラベルキャンペーンで国内旅行が促され、全国の観光地にお金が落ちて、窮地に追い込まれた旅行・観光業が息を吹き返せば、関係者に喜ばれるだろう。そうなれば、経済のV字回復を目指す安倍政権の追い風になる。ただ、GoToキャンペーンで感染が拡大してしまっては身もふたもない。
安倍政権と知事の間に生じる温度差
6月17日の通常国会閉会後、解散・総選挙が今秋にも行われるかもしれないという噂が立った。ちょうど新規感染者が全国的に減っていた頃でもある。
解散総選挙に踏み切るのを前に、GoToトラベルキャンペーンで国内観光地を盛り上げる。そのために、GoToキャンペーンは紅葉がきれいな秋の観光シーズンではなく、夏休みに打っておかないといけない。
秋にGoToトラベルキャンペーンを打った後に総選挙となると、秋から冬にかけて感染拡大が最も懸念される時期に重なってしまう。それだと、衆議院総選挙の時期は選べるのに、なぜそんな時期に選挙をするのかと批判を浴びかねない。
首都圏からの観光客による感染拡大を恐れる道府県の知事は、今の時期のGoToトラベルキャンペーンの開始を批判した。知事にとって、国政選挙の時期は二の次である。それより、地元での感染拡大をどう防ぐかが最重要だ。安倍政権と知事との温度差は、そうした面でも生じている。
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