関東も危ない豪雨降らせる「線状降水帯」の正体 集中豪雨を引き起こす大きな原因の1つ

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「大雨が降る前に、天気予報では降水確率がいくらになりそうだとか、予想降水量が何ミリになりそうかなどを伝えますよね。でもこの数字だけを聞くと、どうしても他人事な受け止め方になってしまいがちです。だから、避難指示が出ても避難しない人が出てしまう。

でも、線状降水帯という言葉が浸透すれば、雨が降るとレーダーの観測結果を見るようになると思うんです。もし、自分のいる場所付近で赤や黄色の線が出ていて、それがしばらく動かなさそうなら、『これはまずい』と直感でわかります。そして、どうしようかを自分の頭で考えるようになります。そうやって状況を自分事としてとらえ、主体的に動けるようになってほしい」(茂木研究員)

15時間先までの降水量分布がわかるサイト

では、事前に線状降水帯をチェックするにはどうすればよいのでしょうか。まずは、気象庁ホームページの「今後の雨(降水短時間予報)」をブックマークしておくことをおすすめします。このページには、レーダーとアメダスなどから観測した降水量分布が表示されています。15時間先までの降水量分布がわかるため、この先自分の住んでいる地域に線状降水帯がかかりつづけるのかどうかがわかるのです。

7月4日に球磨川が氾濫したときの洪水危険度分布の表示。氾濫した球磨川は黒く表示されている。また周囲の川も「きわめて危険」を示す濃い紫色や避難が必要な「非常に危険」を示す薄い紫色に表示されている。 (出所)気象庁ホームページ

そのうえで、実際に雨が降りだしたら、「今後の雨(降水短時間予報)」の隣のタブの「雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト)」や「危険度分布」もチェックしましょう。「雨雲の動き」では1時間先までの降水の状況がよりきめこまかに表示されますし、雨雲が今後どの方向に動いていくかもわかります。もし、雨雲がしばらく動かないのなら、それはとても危険な状態になるということが、想像がつくわけです。

さらに、「危険度分布」では自分の近くの場所の洪水・浸水・土砂災害の危険度が色分けされて表示されます。自分のいる場所付近の色を見れば、そこが危険かどうかもすぐにわかります。

大雨災害は、地震と違って事前に予測できるため、適切な行動をとれば命を守ることにつながります。命を守るコツは、自分から主体的に情報を取りに行き、自分の頭で状況を判断して、適切な行動をとれるようになることです。そのためにも気象用語に敏感になり、危険な情報を示す言葉を耳にしたら気象情報をこまめにチェックする習慣を身につけてほしいと思います。

今井 明子 気象予報士・サイエンスライター

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いまい あきこ / Akiko Imai

2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けにわかりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。著書に『気象の図鑑』(共著、技術評論社)、『異常気象と温暖化がわかる』(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。

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